平成28年度プラズマ・核融合学会賞

平成28年度プラズマ・核融合学会賞は,次の方々が受賞されました。おめでとうございます。
授賞式および受賞記念講演は第33回年会初日(11/29(火)9時〜)に行われました。

平成28年度学会賞選考委員会

委員長:吉田善章(副会長)
委 員:上田良夫(阪大)、小野 靖 (東大)、久保博孝(量研機構)
委嘱委員:市村 真(筑波大)、江尻 晶(東大)、小川雄一(東大)、門信一郎(京大)、岸本泰明(京大)、栗原研一(量研機構)、榊原 悟(核融合研)、図子秀樹(九大)、難波慎一(広島大)、西浦正樹(東大)、沼田龍介(兵庫県立大)、福山 淳(京大)、藤田隆明(名大)、古川 勝(鳥取大)、三浦英昭(核融合研)

第24回 論文賞


受賞者 村上 泉(核融合研)、鈴木千尋(核融合研)、森田 繁(核融合研)、田村直樹(核融合研)、加藤太治(核融合研)、坂上裕之(核融合研)、須藤 滋(中部大)
対象実績 「Validation of Spectroscopic Model of Fe Ions for Non-Equilibrium Ionization Plasma in LHD and Hinode」
Plasma and Fusion Research、 Vol.9, 1401056(2014)
選考理由 LHDプラズマに不純物を入射した際に放射される極端紫外線分光が精力的に行われている。その分光データは、宇宙・天体観測や、EUVリソグラフィー用光源の開発などに広く応用されている。本研究では、LHDのデータに基づいて鉄イオンの輝線強度比に関するモデリングを検証し、太陽観測衛星「Hinode」で報告されたFeXVII発光線の分岐比異常について、それが計測手法の不備から生じたことを明らかにした。物理研究の着実な進歩を支える重要な研究として高く評価できる。また、核融合実験装置の多様な応用可能性を示したという意味でも評価できる。以上の理由からから、本論文は論文賞にふさわしいと判断した。

第21回技術進歩賞


受賞者 篠原俊二郎(東京農工大)
対象実績 「高密度ヘリコンプラズマ源の先端開発と種々の応用」
*プラズマ・核融合学会誌 Vol.91(2015)412-428
選考理由 本研究によって、ヘリコン波を用いたプラズマ源の研究は大きく発展した。多様な装置サイズ、磁場配位、励起法にわたって基盤的な実験を積み重ね、物理特性の解明が進んだ。また応用分野の拡大に大きく貢献した。特にプロセス用プラズマ源ならびに高効率長寿命プラズマ推進ロケットの開発など関連分野に与えたインパクトは大きい。以上の理由から、技術進歩賞にふさわしい研究成果であると判断した。

第21回学術奨励賞


受賞者 小菅佑輔(九大)
対象実績 「乱流と磁場方向流れ場との相互作用に関する研究」
選考理由 受賞者は、核融合プラズマの乱流と輸送に関する研究で優れた成果をあげている。密度勾配により駆動されるドリフト波不安定性と磁力線方向のシア流の関係について、比較的単純化したモデルで現象の本質を明らかにしようとしており、独創的な研究を行っている。プラズマ・制御核融合に関する研究分野で将来の活躍が期待される若手研究者として、学術奨励賞にふさわしいものと判断した。

第21回学術奨励賞


受賞者 宇藤裕康(量研機構)
対象実績 「核融合原型炉における電磁構造解析に基づく遠隔保守概念の構築」
選考理由 受賞者は、核融合原型炉の基本設計案を決定する統合解析手法の開発とそれに基づく遠隔保守方法の提案で核融合研究に貢献している。最近のトカマクでは、プラズマの高性能化(垂直不安定性やβ限界)のために安定化シェルをプラズマ近傍に設置する必要が強く求められている。この安定化シェルの配置を含めた遠隔保守方式を検討することが急務である。この課題に取り組んだ研究成果をあげており、今後の活躍が期待されることから、学術奨励賞にふさわしいものと判断した。

第21回学術奨励賞


受賞者 前山伸也(名大)
対象実績 「ジャイロ運動論的シミュレーションの超並列計算手法の開発とマルチスケールプラズマ乱流物理の解明」
選考理由 受賞者は、プラズマ乱流の数値シミュレーション研究で顕著な功績をあげている。これまで電子とイオンのスケール分離を仮定して別個に取り扱われていた現象を統一的に解析し、異なるスケール間の相互作用が乱流輸送の評価に大きな影響を与えることを示した。この研究は、高性能なシミュレーションコードの開発によって可能となった。通信と演算のオーバラップなどの最適化手法を駆使してコードを高性能化し、京コンピュータにおいて世界最先端の100万並列級の並列化性能を達成している。計算コードの開発・高性能化を自らおこなう能力をもつ若手の研究者であり、将来プラズマ乱流の分野で様々な成果をあげることが期待されることから、学術奨励賞にふさわしいものと判断した。