平成27年度プラズマ・核融合学会賞

平成27年度学会賞選考委員会
委員長:吉田善章(副会長)
委員:小野 靖(東大),草間義紀(原子力機構),白神宏之(阪大)
委嘱委員:安藤 晃(東北大),上田良夫(阪大),内野喜一郎(九大),江尻 晶(東大),久保博孝(原子力機構),小森彰夫(核融合研),長山好夫(核融合研), 沼田龍介(兵庫県立大),廣岡慶彦(核融合研),福山 淳(京大)

第23回 論文賞


受賞者 河森栄一郎(台湾國立成功大學大学院)
対象実績 「Observation of Electromagnetically Induced Transparency in Numerical Magnetized Plasma Experiment」
Plasma and Fusion Research, Vol.7, 1301086 (2012)
選考理由 磁化プラズマの電磁誘導媒質透明化(EIT)は,プラズマに特定の条件(EIT 条件)を満たす二つの電子サイクロトロン波(ポンプ用 EC 波,プローブ用 EC 波)が入射されると,本来プラズマ中で共鳴吸収されるプローブ用 EC 波が吸収されずに 透過する現象として受賞者が初めて実験的に確認していた.対象論文では,著者が開発した粒子シミュレーションコードを用いて,プローブ用 EC 波が吸収されずにプラズマ中を伝搬すること,EIT 機構として理論的に予測されるポンプ用 EC 波とプローブ用EC波との結合により励起されるプラズマ振動を同定したことなど,実験結果を再現すると共に,理論との一致を示した.大振幅波によって線形分散関係を変形させることは,粒子加速やプラズマ加熱制御などへ応用できる可能性もあり,今後の発展が期待される.以上の理由により,本論文は論文賞に相応しいと判断した.

第20回技術進歩賞


受賞者 近藤浩夫(原子力機構),金村卓治(原子力機構),古川智弘(原子力機構),若井栄一(原子力機構),堀池 寛(福井工大),吉橋幸子(福井工大),帆足英二(阪大)
対象実績 「IFMIF/EVEDA プロジェクトにおける液体リチウムターゲットの工学実証」
*「プラズマ・核融合学会誌」Vol.88‐12(2012)
選考理由 IFMIF による核融合中性子照射環境実現のためには,長時間安定した高速 Li 表面流の実現が重要な技術的課題であった.本技術開発の成果は,IFMIFに必要とされる仕様を完全に満たした Li流を実現し,IFMIF実現のための重要なマイルストーンをクリアした点で高く評価でき,技術進歩賞に相応しいと判断した.

第20回技術進歩賞


受賞者 藤堂 泰(核融合研),ビアワーゲ アンドレアス(原子力機構),西村征也(神戸市立高専),ワン ハオ(核融合研)
対象実績 「高エネルギー粒子・MHD 連結シミュレーションコード MEGA の開発」
*Plasma and Fusion Research, Vol.9, 3403068 (2014)
選考理由 アルファ粒子やビーム粒子など高エネルギー粒子がプラズマにおよぼす効果の研究は,今後ますます重要になる.本研究グループは,MEGA コードの開発を通じて,トカマクおよびヘリカルプラズマにおけるアルヴェン固有モードの線形現象および非線形現象の解明に向けて世界的に顕著な貢献をしてきた.粒子の運動論的な効果とマクロな電磁現象を連結させて解析できる高性能のシミュレーションコードが独自に開発されたことの意義は大きく,技術進歩賞に相応しいと判断した.

第20回技術進歩賞


受賞者 江本雅彦(核融合研),鈴木千尋(核融合研),關 良輔(核融合研),佐藤雅彦(核融合研),鈴木康浩(核融合研),横山雅之(核融合研),居田克巳(核融合研)
対象実績 「実験データと理論計算データを融合した統合輸送解析システムの開発と LHD 実験での運用実証」
*プラズマ・核融合学会誌」Vol.90-9(2014)
選考理由 本研究は,核融合科学研究所大型ヘリカル実験から得られる大量の実験データから理論計算データを融合させて本質的な物理パラメータを導きだし,必要な輸送パラメータへ情報を集約することができる新しい統合輸送解析システムを開発し,それを実際に運用することにより,多くの輸送現象の可視化に大きく貢献した,実験解析と理論解析を結びつける新しい研究スタイルを確立し,実験・理論の連携研究の一つの方向性を示したことは高く評価され,技術進歩賞の受賞に相応しいと判断した.

第14回産業技術賞


受賞者 鈴木靖生(東芝システムテクノロジー),奥山利久(東芝電力システム社),浅野史朗(東芝電力システム社),津守克嘉(核融合研),金子 修(核融合研)
対象実績 「負イオン源における新しいビーム加速方法の実証と大電力中性粒子ビーム生成技術の確立」
*プラズマ・核融合学会第20回年会招待講演他
選考理由 本研究では,負イオン中性粒子ビーム入射装置において,負イオン源における接地電極のスロット化による熱負荷軽減とコンディショニング運転時間の劇的低減,ステアリング電極化による能動的ビームステアリング,陰極フィラメントや放電容器形状の最適化による大面積アークの実現など多くの成果をあげ,6 MW を越える加熱パワーを長期間にわたって安定に発生させることに成功した.その高い加熱出力と信頼性によって核融合科学研究所大型ヘリカル実験の運転領域拡大と性能向上に大きく貢献した点が高く評価され,産業技術賞に相応しいと判断した.

第20回学術奨励賞


受賞者 田辺博士(東大)
対象実績 「スカラー・ベクトルトモグラフィを応用した2次元イオンドップラー温度・流速計の開発」
選考理由 受賞者は,荷電交換再結合分光法を用いて受動的に測定した波長毎の線積分分光信号にスカラー・ベクトルトモグラフィー手法を適用し,逆問題解法手法を確立したことにより,2次元の局所的イオン温度・流速計測を実現した.中性粒子ビーム入射なしで荷電交換再結合分光計測による2次元イオン温度・流速計測を可能にしたことにより,これまで困難であったプラズマ内の領域でもプラズマ物理現象のイメージ化を可能にし,物理機構の解明に大きく貢献することが期待される.この手法は,既に国内外のプラズマ実験装置に広く採用され,先進的な局所的イオン温度・流速計測として高く評価されている.以上の理由により,本業績は学術奨励賞に相応しいと判断した.