平成24年度プラズマ・核融合学会賞

平成24年度学会賞選考委員会
委員長:二宮博正(副会長) 委員:安藤 晃(東北大)、疇地 宏(阪大)、山崎耕造(名大)
委嘱委員:岸本康明(京大)、坂本瑞樹(筑波大)

第17回 技術進歩賞


受賞者 森田 繁、董 春鳳、後藤基志(核融合科学研究所)
対象実績 制動放射連続光を用いた極端紫外分光器の絶対感度較正法の確立
Plasma and Fusion Research, Vol.6, 2402078 (2011)他
選考理由 極端紫外(EUV)領域での分光研究は長年研究が進められてきたが、磁場核融合分野では分光器の絶対感度較正を行う手法が確立しておらず、分光計測によって不純物の定量評価を行うことが困難であった。申請者らは,高温プラズマを光源として利用することで EUV 領域での分光器の絶対較正法を確立することに成功した。この計測手法確立のために、CCD 検出器を基準として分光器や回折格子の改良に取り組み,技術開発を繰り返した結果、LHD プラズマを利用した観測に成功した。その結果、従来の EUV 計測機では困難であった高い空間分解能も達成し、不純物の空間分布計も成功している。この成果は核融合研究だけでなく、基礎研究や宇宙観測など幅広く波及効果が期待でる成果であり高く評価できる。核融合研究においても高 Z 材料(W,Mo など)のスペクトルの評価も可能であり、将来の研究展開に活用されることが期待できるなど技術進歩賞に値する成果である。

第17回 学術奨励賞


受賞者 時谷政行(核融合科学研究所)
対象実績 ヘリウムプラズマ照射と Mixed-material 堆積層形成による核融合装置プラズマ対向材料の表面変質とそれらが燃料粒子捕捉特性へ与える影響
プラズマ・核融合学会第28回年会(招待講演)他
選考理由 実機プラズマ閉じ込め装置における複合環境下でのプラズマ・壁相互作用(PWI)現象の機構解明は、核融合開発において非常に重要な課題の一つである。時谷政行氏は、プラズマ対向材料の表面改質に対するヘリウムプラズマの影響及び複合 堆積層形成の影響に着目して研究を進めることで、実機での複雑な PWI 現象の機構解明した。この研究においては、集束イオンビームによるナノ加工と透過型電子顕微の組み合わせによる PWI 現象のナノレベル解析という独自の手法を用いて総合的に研究している。複雑な PWI 現象をナノレベルの解析からマクロ現象の理解に繋げようとう取り組みは、核融合研究の学理の進展に寄与するものであり高く評価される。以上の理由から、同氏の業績は学術奨励賞に値すると判断した。

第17回 学術奨励賞


受賞者 谷塚英一(日本原子力研究開発機構)
対象実績 燃焼プラズマにおける先進トムソン散乱計測
プラズマ・核融合学会第28回年会(招待講演)他
選考理由 ITER の燃焼プラズマにおけるトムソン散乱計測では、高放射線環境下で精度の良い測定を行うため、その場(in-situ)での分光透過率の較正手法などの確立が喫緊の課題であった。谷塚英一氏はこの課題解決に取り組み、2波長のレーザートムソン散乱光を利用した相対分光透過率構成による較正手法をシミュレーションで検討しその有効性を示すとともに、背景光としての制動放射光を利用した電子密度の較正法を討し、電子密度分布と実効イオン電荷を同時に評価できる手法を開発した。さらに、電流駆動や強電子加熱時のプラズマ輸送などの物理機構解明に重要な非等方電子温度測への適応性について有用な成果を得た。これらの成果は単独でも優れているとともに、高温プラズマや ITER 燃焼プラズマにおける計測手法の開発として有用な成果であり、学術奨励賞に値すると判断した。