平成23年度プラズマ・核融合学会賞

平成23年度学会賞選考委員会
委員長:二宮博正(副会長) 副委員長:斧高一(副会長) 幹 事:山崎耕造(編集委員長)、疇地 宏(企画委員長)
委嘱委員:藤山 寛(長崎大)、福山 淳(京都大)、坂本瑞樹(筑波大)
貢献賞に対する審査委員会
委員長:二宮博正(副会長) 副委員長:斧高一(副会長) 幹事:疇地 宏(企画委員長)
委嘱委員:岡村昇一(元常務理事)、三間圀興(元副会長)

第19回 論文賞


受賞者 畠山力三(東北大学)、金子俊郎(東北大)
対象論文 Nano-Bio Fusion Science Opened and Created with Plasmas
Plasma and Fusion Research, Vol.6, 1106011 (2011)
選考理由 プラズマ応用の新しい分野として、近年、プラズマのバイオ・医療応用が注目を集めている。本論文は、プラズマを用いたバイオ・医療応用研究について、熱プラズマによるバイオ適合材料コーティング、大気圧非平衡プラズマによる低温滅菌や血液凝固、低圧力非平衡プラズマによる低温滅菌などに関する国内外の研究の現状と方向性を紹介・分析するとともに、著者らのプラズマ物理を原点とする挑戦的・独創的なナノバイオ融合科学研究の最新の成果について述べたものである。著者らは、ナノカーボン材料(フラーレン、カーボンナノチューブ)のバイオ・医療応用へのポテンシャルに注目し、気相、液相、気固界面、液固界面、気液界面プラズマの電場制御の方法に立脚して、種々の原子を内包するフラーレン、およびDNAなどの生体高分子を含む多種多様の原子・分子を内包するカーボンナノチューブの創製に成功した。著者らはさらに、このDNA内包カーボンナノチューブから成る新規複合物質によるデバイスを作製してダイオード特性を実証し、将来の“プラズマナノバイオエレクトロニクス”構築への見通しを示した。以上の理由から、本論文は、新しい学術分野「プラズマが拓き創るナノバイオ融合科学」について世界を先導する著者らの斬新で優れた研究成果をまとめた総説であり、論文賞に値する

第16回 技術進歩賞


受賞者 長山好夫(核融合科学研究所)、吉永智一(防衛大学)、桑原大介(東京工業大学)、山口聡一朗(関西大学)
対象実績 LHD におけるマイクロ波イメージング計測の開発
Plasma and Fusion Research, Rapid Communications Vol.5 030 (2010)他
選考理由 高性能核融合プラズマの理解のためには、局所不安定性や乱流の観測がきわめて重要であり、電子温度・密度の揺動の3次元分布計測が注目されている。本研究チームは、高感度イメージング検出器、膨大なチャンネル数の受信回路や長波長結像光学系の開発などの高度な技術的課題を克服して、100GHz帯2次元電子サイクロトロン放射イメージング(ECEI)と60GHz帯3次元マイクロ波イメージング反射計(MIR)を開発し、ECEIとMIRとの同時測定に世界で初めて成功している。LHDでの今後の詳細な観測結果に期待が寄せられている。この技術は、プラズマ計測技術分野のみならず、産業や医療の分野でも応用が期待でき、新分野を開拓するものである。以上の理由から、本研究は「技術進歩賞」にふさわしい、優れた成果であると判断できる。

第16回 技術進歩賞


受賞者 永津雅章(静岡大学)、荻野明久(静岡大学)
対象実績 マイクロ波プラズマを用いた医療器具低温滅菌技術の開発
J. Plasma Fusion Research SERIES Vol.8, 564(2009) 他
選考理由 近年、プラズマのバイオ・医療応用が新しい分野として注目を集めている。医療分野では現在、エチレンオキサイドガスや高圧蒸気を用いた医療器具の滅菌法が広く用いられているが、前者ではガスの毒性の問題が、後者では滅菌対象にプラスチックなど非耐熱材料を使用できない問題が指摘されている。本研究では、これら従来の滅菌法に替わる新しい方法として注目される非平衡プラズマを用いた低温滅菌について、低圧力マイクロ波放電による窒素・酸素混合ガスプラズマを用いて国内ではじめて成功するとともに、系統的なプラズマ・表面診断をもとにプラズマによるバイオ高分子不活化のメカニズム解明の研究において世界を先導し、さらに、包装された状態の医療器具の低温滅菌にも成功した。以上の理由から本研究は、今後のプラズマを用いた滅菌技術の有用性を学術的・実用的に示したものであり、技術進歩賞に値する。

第16回 学術奨励賞


受賞者 秋山毅志(核融合科学研究所)
対象実績 機械振動自己補正機能付き干渉計の開発研究
Plasma and Fusion Research Vol.5, 047(2010)他
選考理由 プラズマの密度測定に用いられる、高調波の干渉による機械的振動成分を自動除去するディスパージョン干渉では、測定信号の変動が計測誤差になる欠点があった。秋山毅志氏の行った標記研究は、プローブ光を位相変調し、その変調強度比から位相抽出をするという方法でこの問題を克服したものであり、その功績はプラズマ・核融合研究の発展に極めて顕著であると認められる。以上の理由から、同氏の業績は学術奨励賞に値するものと判断できる。

第16回 学術奨励賞


受賞者 白石淳也(日本原子力研究開発機構)
対象実績 回転プラズマにおける抵抗性壁モードの理論・シミュレーション研究
プラズマ・核融合学会第27回年会招待講演他
選考理由 抵抗性壁モードの安定化は、トカマクプラズマの高ベータ化を実現する上で最も重要な物理・工学的課題の一つである。白石淳也氏は、プラズマ回転の効果を取り入れた抵抗性壁モードの電磁流体的線形安定性について、共鳴面近傍に有限幅をもつ内部層を導入し、解析的な分散関係を導くことによって、回転シアが安定性に与える影響を解明した。さらに同氏は、実形状トカマク平衡配位における抵抗性壁モード安定性解析コードを開発し、JT‐60SAをはじめとする実験解析への適用を進めている。これらの成果は、今後のITER運転や原型炉設計にとって極めて重要であるとともに、学術的にも高い価値をもつものであり、以上の理由から同氏の業績は学術奨励賞に値すると判断できる。

第5回 貢献賞


受賞者 前 PFR 誌幹事エディター 藤田順治
対象実績 回転プラズマにおける抵抗性壁モードの理論・シミュレーション研究
プラズマ・核融合学会第27回年会招待講演他
選考理由 藤田順治氏は、プラズマ・核融合学会の英文誌「Plasma and Fusion Research(PFR)」の創刊時から5年間に亘り幹事エディターを務められた。新たに学術誌を創刊し、その質を高く維持するためには、多大な努力が必要である。同氏は、すべての論文に目を通して質の高い論文として世に送り出すという、他の研究者には不可能と思われる献身的な努力により、同誌の学術的価値を大きく高められた。この本学会に対する同氏の献身的かつ精力的な活動は、貢献賞として十分に値すると判断できる。