標記会議が2003年7月15日から20日にわたってGreifswaldで開催されました.なお学会誌Vol.79-10月号に本報告が掲載されます。次回 は2005年7月19日−7月24日 Koningshof, Veldhofen(オランダ)で開催される予定です。 |
赤塚 洋(東工大原子炉研) 標記の国際会議が,本年も7月15日〜20日の6日間にわたって,ドイツのGreifswaldにて開催された。ICPIGという国際会議のスコープや,歴史については,2年前の前回,名古屋にて開催された折りに,既に名大後藤教授および静岡大神藤教授が本誌77号932頁にてご紹介下さった通りであるので詳細は省略するが,電離気体現象に関連する幅広い分野についての研究開発の発表と意見交換,およびそれらの発展を旨とし,隔年で欧州を中心に旧西側・東側とで交互に開催されていた国際会議である。 ![]() Greifswaldは旧東ドイツの小さな学園都市で,全ての国際会議行事を一括して行える場所が限られるため,市の劇場,大学の大講義室,市の科学者会館ホールの3カ所に分かれて,会議が進められた。 参加国の分布としては,ホスト国ドイツを含めヨーロッパから23ヶ国(旧ソ連除く),旧ソ連から6ヶ国,アジアから6ヶ国,南北アメリカ3ヶ国,アフリカ3ヶ国,オーストラリアと全41ヶ国であり,前回の名古屋での37ヶ国を僅かに上回った。参加者総数は402名であり,前回の名古屋の開催時の700名を遙かに下回った。これはおそらく,主催国の参加者数の差によるものと思われる。国別の参加者数について,10名以上の参加のあった国々を列挙すると,ドイツの151名,ついで日本からも56名,ロシア29名,フランス17名,オランダ16名,米国14名,チェコ12名,ルーマニア10名であった。前回同様,気体放電現象の基礎研究に伝統的に力を入れているロシアおよび旧ソ連から,多くの研究者が参加している。また,こうした非平衡放電プラズマの基礎・応用現象が,欧州の比較的小さい国々(オランダ,チェコ,ルーマニア,など)で活発に研究されていることをも示している。もちろん,我が国も,応用研究ばかりに力を注いでいるわけではない。産業応用向けの放電現象,特に近年注目を集める環境問題を解決するためのプラズマの研究,大気圧非平衡プラズマなどについて,我が国からも多くの研究者が参加し研究発表および討論を行った。 本会議の口頭発表には,General Lecture, Topical Lecture があるが,これらは伝統的にすべて招待講演である。我が国からも,General Lectureとして,静岡大神藤教授による“Properties of Planar Surface Wave Excited Plasmaモのご講演,Topical Lectureとしては,山口大福政教授による“Isotope Effect of H-/D- Volume Production in Low-Pressure H2/D2 Plasmas - Measurement of VUV Emissions and Negative Ion Densitiesモの講演があった。今回はEvening Lectureとしてもう1件口頭発表があった。その他のContributed Paperはすべてポスター発表であり,この方式についても前回と同様である。今年度は,8件のGeneral Lecture,24件のTopical Lecture,およびPost deadlineを含めて385件のポスター発表があった。 今回のContributed Paperの分類トピックス,および講演件数をTable1に示す。若干論文数の少ないトピックスもあるが,名古屋で開催された時と比べると,論文数の特別に多いトピックスはなく,まんべんなく種々の分野が発表されていることが,参加者の多い欧州諸国の研究の特徴と捉えることができる。前回の名古屋での開催時には,とりわけプラズマの半導体プロセスでの応用分野で多くの論文が発表されたが(トピックス10番),トピックスの分類方法にもよるのであろうが,日本国内の電離気体現象の研究が,半導体プロセスに(悪い言い方をすれば)若干偏っていたのかもしれない。しかしながら,今年は我が国からも56名もの参加者がありながら,トピックス10番の論文数が意外に少ない。ということは,ICPIGにおいて放電現象の基礎研究が深く議論されているということを期待して,ICPIGに出かけてゆき,基礎研究の発表・討論を行う我が国の研究者が少なからず存在することを,逆の形で示しているとも考えられる。その意味では,我が国の低温・非平衡プラズマの「基礎分野の」研究者層も決して薄いということはなく,欧州諸国に伍して,あるいはそれ以上に良く健闘しているとさえ,いえるかもしれない。 話題性のあるテーマに的を絞って討論を行うワークショップとしては,今年は2日目の午後,“Plasma Light Sourcesモ, と“Reactive Plasmas and Surface Interactionsモがテーマとして選ばれ,それぞれ8件および6件の講演があり,パラレルセッションとして開催された。新聞報道通り,今年の欧州の夏は例年にない暑さであったが,これら口頭発表の会場は勿論,ポスター講演の会場(写真1)もさらに,多数の聴衆が参加し,大盛況で大変な熱気であった。 エクスカーションとしては,Greifswaldがバルト海にほど近いということもあり,海岸地方へバスにて出かけるツアーが3種類用意された。残念なことに,大変な暑さだったこの国際会議で,このエクスカーションの日の日中だけ天候が悪く,肌寒さを覚えるほどであった。筆者は,せっかく日本から持参したセーターを,ホテルに置いてきたことを後悔した。ドイツ北東部の厳しさを,少しばかり,知らされた。エクスカーションの日の夕食がバンケットであった。この日は夕刻には天気も回復し,北隣のStrahlsundという町の郊外にあるビール醸造工場のホールを借り切ってバンケットが行われた。本場のドイツビールを堪能できたことはいうまでもない。 なお,次回の開催については,アイントホーフェン工科大学,Philips Lighting, アントワープ大学をホストとして,アイントホーフェンのKroesen教授を現地実行委員長として,日程:2005年7月19〜24日,場所:Koningshof Veldhofen(オランダ)で開催の予定である。 最後に,ICPIGのInternational Scientific Committeeメンバーとして,我が国からも名古屋大学 後藤俊夫教授が選出されており,永らく会議運営・プログラム編集にあたりご尽力頂いて来られました。後藤先生,ありがとううございました。次回からは,北海道大学 酒井洋輔教授に交代されることを付記しておきます。 |
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