令和5年度 学会賞受賞者第40回年会懇親会にて表彰式を開催しました [2023/11/29]

第31回 論文賞

受賞者:仲田資季(NIFS)、本多 充(京大)
「Gyrokinetic Turbulent Transport Simulations on Steady Burning Condition in D-T-He Plasmas」
* Plasma Fusion and Research Vol.17, 1403083(2022)

【選考理由】
燃焼プラズマでは、プラズマ中心部の重水素と三重水素の割合を1対1にすることが求められている。一般には、重水素と三重水素の粒子輸送が同じであるとして燃焼プラズマのシミュレーションが行われている。粒子輸送の同位体効果のシミュレーションは極めて重要であるにもかかわらず、今まで注目されていなかった。本研究は、重水素と三重水素、さらに核融合の灰として出てくるヘリウムを含んだ多種イオンプラズマでの熱輸送と粒子輸送のシミュレーションを行い、重水素と三重水素の粒子輸送の差を見出した。さらにヘリウムの密度によりこの粒子輸送の差が増長されることをも発見した。受賞者は本論文で重水素と三重水素の粒子輸送の違いにより、中心部の重水素と三重水素の比を、粒子補給の重水素と三重水素の比では制御しきれないことを示し、将来の核燃焼における問題点を指摘した。今度ITERの実験が行われると、高い価値を得ることが予想される論文であり、「論文書」に値する優れた論文であると判断できる。

第 28回 技術進歩賞

受賞者:横山達也(QST)、山田弘司(東大)
「核融合プラズマ崩壊事象のサポートベクターマシンと全状態検索による確率評価法の開発とその応用」
* Plasma and Fusion Research Vol.17, 2402042(2022)、他

【選考理由】
受賞者らはプラズマ核融合分野にデータサイエンスの手法を導入し、過去事例の学習から帰納モデルを構築する新たな炉心プラズマの先進予測技術を創世した。この予測技術を核融合プラズマ崩壊事象の実時間制御に適用し、実際にプラズマ崩壊事象の回避に成功している。帰納モデルを求めるという方法論は、閉じ込めプラズマの工学的制御技術に新たな方向性を示し、得られる帰納モデルは新たな物理モデル開拓の動機づけになる。以上のように、本技術は核融合炉の早期実現への寄与が期待できることから、「技術進歩賞」に値すると判断できる。

第28回 学術奨励賞(伊藤早苗特別賞)

受賞者:隅田脩平(QST)
「高速粒子が駆動するイオンサイクロトロン放射機構の研究」
* * 第37回年会口頭発表 02Ca05(2020)、他

【選考理由】
受賞者は、これまで理論的に予測されていたイオンサイクロトロン放射の発生機構を実験的に初めて明らかにした。JT-60Uに設置された加熱用アンテナを受信機として使う独自の方法で、波動の周波数に加え波数を計測し、自ら改良した粒子軌道追跡や波動分散コードを駆使して計測結果とイオン速度分布歪みの関係を示した。また、負イオン中性粒子ビーム入射及び電子サイクロトロン共鳴加熱時に、それぞれ異なる機構によって放射が発生することも見出した。今後、α粒子や高速電子等のトロイダルプラズマの高速粒子計測への発展が期待される成果であり、「学術奨励賞(伊藤早苗特別賞)」に値すると判断できる。

第2回 学会活動奨励賞

受賞者:石﨑悠也(京都教育大学附属高校)
「プラズマ・核融合学会 専門委員会「核融合実現に向けたトリチウム諸課題の検討」での講演に基づく核融合分野での普及・啓発活動に対する貢献」

【選考理由】
石崎悠也氏は、原子力発電所の高レベル放射性廃棄物に対して、「Ours(私たちごと)化」という視点から提言をまとめ、核融合関係者にこの手法を説明し、将来の核融合プラントの安全性に対する啓発活動に大きな示唆を与えた。また、石崎氏は文系志望の高校生であるが、今後も引続きプラズマ・核融合学会との関係の維持が期待される。このように、プラズマ・核融合に関する普及・啓発活動に多大な貢献が認められるとともに、将来の会勢強化・増強にも繋がることから、学会活動奨励賞に値すると判断できる。