会議報告

ITPA (国際トカマク物理活動)第3回会合報告

  • 分 野:「調整委員会」1,「周辺およびペデスタルの物理」2,「MHD,ディスラプションおよび制御」3,「輸送および内部障壁の物理」4,「閉じ込めデータベースとモデリング」5,「定常運転および高エネルギー粒子」6,「SOLおよびダイバータの物理」7,「計測」8
  • 開催日: 2002年9月17〜21日8,10月21〜23日2,3,6,7,10月21〜24日5,10月21〜25日4,10月24〜25日1
  • 場 所:核融合科学研究所(日本,土岐)8,マックスプランクプラズマ物理研究所(ドイツ,ガルヒング)1,2,3,CEAカダラッシュ研究所4,5,6(フランス,カダラッシュ),ローザンヌプラズマ物理研究センター(スイス,ローザンヌ)7
  • 担当委員:嶋田道也(ITER)1,7,高村秀一(名大)1,7二宮博正(原研)1若谷誠宏(京大)1,4鎌田 裕(原研)1,2杉原正芳(ITER)2,3,波多江仰紀(原研)2,谷津 潔(筑波大)2,飯尾俊二(東工大)3,小関隆久(原研)3河野康則(原研)3,8居田克巳(核融合研)4東井和夫(核融合研)4福田武司(原研)4福山 淳(京大)4,6藤田隆明(原研)4小川雄一(東大)5滝塚知典(原研)5三浦幸俊(原研)5,井手俊介(原研)6,高瀬雄一(東大)6,中村幸男(核融合研)6,朝倉伸幸(原研)1,7,加藤隆子(核融合研)7,東島 智(原研)7草間義紀(原研)8,笹尾真実子(核融合研,現在:東北大)8杉江達夫(ITER)8 

    (下線は会合出席者を,1 から8の上付き数字はグループとの対応を示す)

  



 2002年の秋季に,ITPAに関する上記の8つの会合が開催された.「計測」トピカルグループ会合は9月に日本で行われたが,その他の6つのトピカルグループ会合はIAEA核融合エネルギー会議(2002年10月14〜19日,フランス,リヨン)の翌週に欧州各地に展開して開かれた.各トピカルグループ会合の成果を持ちよって,「調整委員会」がマックスプランクプラズマ物理研究所で開催された.これらの会合において,ITERおよび燃焼プラズマの物理に関連する最新の成果について多くの報告および議論が行なわれた.各会合の概要を以下に報告する.簡潔な速報は,プラズマ・核融合学会誌 Vol.79 (2003),No.1/p.70 「ITPA会合報告(4)」1,2,3,No.2/p.193 「ITPA会合報告(5)」7,8,No.2/p.194 「ITPA会合報告(6)」4,5,6に掲載されている.

(author's e-mail:takizukt@fusion.naka.jaeri.go.jp)


1.「調整委員会」


 日本からの出席者は上記の調整委員会委員1とトピカル物理グループ議長の鎌田裕氏(原研)2,朝倉伸幸氏(原研)7を併せ計6名であった.前回の調整委員会から現在までの活動状況の報告の後,今後の活動での重要課題を各物理グループ毎に3-4課題選定した.また,今後の各トピカル物理グループ会合の予定が了解された.旅費負担を軽減するため,年2回のグループ会合の内1回は可能な限り主要な国際会議に連続して開催することとした.平成11年末に発行された「ITER物理基盤」の改訂版をNuclear Fusionに投稿するための検討を進め,平成16年初めに投稿することで準備を進めることとなった.日本からの物理グループ新メンバー8名が了承された.また,ステラレータコミュニティ-から推薦された7名の物理グループメンバー(内2名は日本)が了承された.今回で「定常運転および高エネルギー粒子」の共同議長を退任された宮本健郎氏の長年の貢献に対し,全員から謝意が表せられた.

 なお会合の詳細は
  http://www-jt60.naka.jaeri.go.jp/ITPA/index.html
  http://www.aug.ipp.mpg.de/itpa/ を参照していただきたい.

(author's e-mail: ninomiya@naka.jaeri.go.jp)


2.「周辺およびペデスタル物理」トピカルグループ第3回会合


 今回の会合は,マックスプランクプラズマ物理研究所において「MHD,ディスラプションおよび制御」トピカルグループ会合と並列して開催された.当トピカルグループ会合では,参加者28名(日本3名,EU12名,USA10名,ロシア2名,ITER1名)により,当該分野における最近の研究の進展をレビューするとともに,それに立脚した今後の研究活動方針を決定した.顕著な研究の進展が見られた項目は,1) 高三角度化による高閉じ込めHモードの高密度領域への拡張,2) 周辺圧力勾配を決めるtype I ELMの原因としてPeeling-Ballooningモードが有力であること,3) 閉じ込めおよびモデリングトピカルグループとの協力によるペデスタル蓄積エネルギー経験則を得たこと,4) 小振幅ELM(type II)の発生領域を低安全係数(q95<4)に拡張したこと,5) ELMの無いQuiescent Hモード(QH)を複数のトカマクで実現したこと,等である.一方,今後の課題としては,i) ペデスタル幅の決定要因,ii) ELMで放出される蓄積エネルギーの周辺パラメータ依存性,iii) 中性粒子侵入と密度ペデスタル構造の関係の解明が重要である.1)-5)の一層の進展および,i)-iii)の解明のため,本グループは,特に装置間協力を推進する.Alcator C-Mod,ASDEX-Upgrade,DIII-D,JET,JT-60Uに,MASTを加え,無次元パラメータが同一の領域におけるペデスタル構造評価,安定性およびペデスタル構造の磁場配位依存性(形状,電流分布,アスペクト比)を中心的アプローチとする.また,「MHD,ディスラプションおよび制御」トピカルグループとの合同セッションで,特にELMに関する安定性の今後の研究協力を約した.また,ITERにおける計測設計に関して,本グループからの要望を「計測」トピカルグループに提言した.

(author's e-mail: kamada@naka.jaeri.go.jp)


3.「MHD,ディスラプションおよび制御」トピカル物理グループ第2回会合


 本トピカルグループ会合の出席者は40人程度,うち日本からは4人が参加した.

 新古典的テアリングモード(NTM)に関しては,ECE電子温度揺動計測による磁気島位置検出とEC可動鏡を組み合わせた実時間制御(JT-60U),プラズマ大半径やトロイダル磁場の制御で磁気島位置をECCD位置に合わせる手法(DIII-D),などにより3/2モードを安定化し,規格化ベータ値を高めることができている.またITERでの安定化に必要なECCDパワーは3/2モードで約20MWとのTOPICSコード(原研)による評価結果が報告された.抵抗性壁モード(RWM)については,外部制御コイルを用いた実時間安定化によりベータ値を向上できており(DIII-D),さらに理想壁限界までの高ベータ値を目指して真空容器内への制御コイル設置が進められている.またITERにおいてQ>5を満足する定常運転に必要な最低限の規格化ベータ2.6の領域であれば,現設計のサドルコイルと電源を用いてRWMを安定化できることが,真空容器の二重構造を考慮した解析モデルおよび数値モデルで示された.ELMに関しては,その多くが「周辺およびペデスタルの物理」トピカルグループとの合同セッションにて議論されたが,その他としてペレット入射(ASDEX-Upgrade)あるいは外部パルス電場の印加(TCV)によるELMの高周波数化などが報告された.ディスラプションに関しては,設計の信頼性を上げるため,国際ディスラプションデータベースをさらに充実させることが重要課題とされており,JT-60Uからは,負磁気シアモードを中心としたディスラプションデータベース作成およびその解析結果が報告された.垂直移動現象(VDE)については,JT-60U,Alcator C-Mod,ASDEX-Upgradeでの協力研究によりそのメカニズム,特にプラズマ形状の非対称性効果の理解が進んだ.ディスラプション緩和に関しては,高圧不純物ガス注入法が,熱負荷軽減,逃走電子抑制,VDE抑制,など緊急放電停止に求められる要件を満足することが示された(DIII-D).

(author's e-mail: kawano@naka.jaeri.go.jp)


4.「輸送および内部障壁の物理」トピカル物理グループ第3回会合


 今回の会合では,前週に開催されたIAEA会議での関連する報告内容をさらに発展させる形で (i) 定常高性能トカマクの開発に向けた電流分布の最適形状の検討と (ii) 優れた閉じ込め性能を発揮し,高い自発電流(急峻な圧力勾配によって形成)割合で定常運転を実現する内部輸送障壁(ITB)の形成機構およびITBを持つ高性能プラズマにおける輸送のモデリングに関する議論を主に行った.10月21-23日の本会合後の24-25日にもデータベース活動作業会を継続し,精力的に議論検討を行った.

 前者(i)の課題に関しては,「定常運転および高エネルギー粒子」トピカルグループとの合同会合を開催し,最近のASDEX-UpgradeやDIII-D等における実験結果を考慮した活発な意見交換を行った.その結果,閉じ込め性能の優れたITBを形成する強い負磁気シア放電(しばしばプラズマ中心部の幅広い領域でプラズマ電流が消失する電流ホールを伴う)は,高い自発電流割合が得られる他,電子加熱によってイオン温度勾配モードの成長率が増大(または電場シアが減衰)してもイオン系の熱輸送低減状態が維持され易い等の特長を示す反面,定常維持性能の観点では最適でなく,プラズマ中心部でより平坦な安全係数分布を持つ平衡配位(弱磁気シア配位)が望ましいとの見解で合意した.特に,ITBを持つ弱磁気シア放電では電子サイクロトロン波等を用いた電子加熱の下で密度分布が顕著に平坦化し(新古典論の遮蔽効果によると考えられる)不純物の蓄積が抑制される点が好ましいとされた.今後は,閉じ込め性能と到達ベータ値の両方を鑑みて(1)電流ホールを伴う高性能負磁気シア放電における中心安全係数の低減(安全係数が極小となる半径位置は維持)および(2)標準的な(中心正磁気シア)放電を基本にした自発電流と外部電流駆動による弱負磁気シア配位の形成の両方向から電流分布の最適化を図ることが重要な実験研究課題になると考えられる.

 一方,分布形状の硬直性(stiffness)を維持しながら,即ちITBを伴わない改善閉じ込め状態(硬直性を持つのは温度分布のみで密度分布が尖頭化することからイオン温度勾配モード等による乱流輸送が低減すると考えている)がASDEX-Upgradeに続いてDIII-Dでも観測されたとの IAEA会議報告を受け,ITERにおける混成運転(外部電流駆動の割合が高い定常運転の形態)の基本放電シナリオとして,その特性を異なる実験装置間で比較するため,協力研究の枠組みに取り込むことになった.その他,電子系に重点を置いたITBの形成条件の比較研究やITBを持つ高閉じ込めプラズマを対象にした電子加熱の寄与,無次元相似則実験等を骨格とする協力実験の計画について討議を行い,3件の論文発表を含む活動成果と併せてITPAの調整委員会に報告することになった.

 後者(ii)の課題に関しては,DIII-DとJETおよびJT-60UのITBを伴う典型的な弱磁気シア放電と負磁気シア放電における分布形状をJETTO(長波長の乱流揺動が電場シアと負磁気シアで抑制されるとの考えに基づいたモデルを用いて熱輸送係数を記述)およびWeilandの予測モデルで説明できなかったことを鑑みて,トロイダル運動量の入力分布等を考慮した輸送モデルの見直しを重点的に進めることになった.輸送モデルの検証に関わる今回の作業で,ITBに関する国際データベースがその有効性を示したことは特筆に値する.また,この過程においてGLF23コードの問題点(負磁気シア放電における有限ベータ効果が正しく評価されていない)が明らかになり,モデルの修正作業が進行中との報告があった.一方,ITBの形成条件に関しては,電場のシア率とイオン温度勾配モードの線形成長率をジャイロ運動論に基づく線形安定性解析コードを用いて定量評価しているが,必ずしもITBの形成位置で「電場のシア率≧イオン温度勾配モードの線形成長率」とはならないとの結果を受け,同一の放電をGKSとFULLに加えてGS2コードで解析し,比較検討することになった.また,有限ベータ効果を考慮したKINEZEROコードの有効性を示す解析例の報告があった.

 さらに一点,今回の会合で特筆に値するのは,LHDにおける電子系ITB形成機構に関する報告があったことである.ヘリカル型(ヘリオトロン,トルサトロン型)閉じ込め装置は中心負磁気シアを固有の性質として備えており,電子ルートの形成に伴う電場シアの形成と異常輸送の低減が観測されている.レイノルズ応力によるシア流の形成を想定するトカマクとは,契機となる物理機構が異なるが,電子温度勾配の特性長等に類似点が見られることが分かった.同じトーラス系閉じ込め装置における物理の理解を深めるためにも双方の比較研究を進めることの意義は大きく,今後は捕捉電子モードと電子温度勾配モードに注目して電場シアと有限ベータ効果の解析を重点的に進める予定である.

 後半2日間にわたって行ったITBに関する国際データベース活動の作業会では,前述の議論を効率的に発展させるため,(1)非定常統合輸送モデルの開発と(2)線形安定性解析コードの検証および(3)理論モデルに直結した局所物理量(温度勾配の特性長で規格化したラーマー半径や規格化圧力勾配等)の装置間比較,(4)核燃焼プラズマで想定される強力な電子加熱がイオン系ITBにおよぼす影響とITBを持つプラズマにおける不純物輸送に注目した比較研究を重点課題領域とし,各領域における具体的な進め方を討議した.また,各領域における作業結果を取りまとめ責任者が次回会合で報告することになった.国際データベース活動は,当初0次元のスカラー量解析が主体であったが,2次元分布データの比重が最近特に高くなっている.この状況を鑑みて,さらに効率的なデータベースの運用を図るため,カラム研究所で管理されている閉じ込め班の分布データベースと統合し,今回のIAEA会議論文の刊行に併せて一般公開することになった.

(author's e-mail: tfukuda@naka.jaeri.go.jp)



5.「閉じ込めデータベースとモデリング」トピカルグループ第3回会合


 本トピカルグループ会合は参加者約25名(日本から3名)で開かれ,グループが取り扱っている3種類のデータベース(DB)に関して,各々以下の議論がなされた.また,データベースの解析をITER,FIRE等の閉じ込めの予測から,核燃焼プラズマの性能予測に移す議論もなされている.(1) 閉じ込めDB:コアとペデスタルの閉じ込めエネルギーを分離した比例則を導出するため,「周辺およびペデスタルの物理」トピカルグループと協力してペデスタルDBを増強し,Hモード閉じ込めDBの解析を行っている.中型装置(JFT-2M,MAST)のデータも増強された.ペデスタル部エネルギーの閉じ込め機構が主に熱拡散輸送かMHD不安定性限界とする二つのモデルによりデータベース解析を進めているが,現在のところ統計的に2モデル間の優劣を決定できていない.しかし,一方この解析から,従来の ITER 全閉じ込め性能に関する予測精度が高いことが確認できた.さらに会合中の閉じ込め作業グループ会議において,HモードとLモードの閉じ込めの再検討を行い,ベータ値増加時のコア部閉じ込めの劣化傾向について今後重点的にデータベース解析を進めることにした. (2) Hモード遷移パワーしきい値DB:MASTのデータが新たに追加され,遷移パワーしきい値のアスペクト比依存性を明らかにする解析が進められている.しかし,MASTがダブルヌル配位であるため(従来装置ではシングルヌル配位に比べしきい値が高くなっている),明解な結論は得られていない.またダイバータ形状,Zeff依存性等に関する解析も継続して進められている.(3) 分布DB:現在ITPA分布データベース(IPDB)としてカラム研究所で管理され,輸送モデルとの比較が継続されている.分布DBと輸送モデルの検証,輸送モデルの提案および ITER 輸送シミュレーションに関し,「輸送および内部障壁の物理」や「定常運転および高エネルギー粒子」トピカルグループとの共同セッションを通し,多くの発表があり,討議が行われた.また,分布DBについては,トピカルグループ間の連携が重要であるので,データベースの共有化・取扱い方等に関する詳しい議論・検討が行われた.

(author's e-mail: miura@naka.jaeri.go.jp)



6.「定常運転および高エネルギー粒子」トピカルグループ第2回会合


 今回よりグループ名が「定常運転および高エネルギー粒子 (Steady State Operation and Energetic Particles)」と改められた.まず,第19回IAEA会議での関連発表のまとめが報告された.電流駆動コードについて議論を行い,今後電流駆動手法(LHCD, ECCD, NBCD, FWCD)ごとに計算コードの検証を行うこととし,複数のコードを可能な限り実験データ(JT-60U, JET, DIII-D, Tore-Supra, ASDEX-Upgrade, FTU等)を用いて比較することが提案された.ITERの計測に関して,高エネルギー粒子/加熱/電流分布計測各々について担当者を設定し今後の検討を行うこととした.ITER定常およびハイブリッド運転について,共通ターゲット;a)自発電流の高い(>50%) qmin 〜 2の弱(正/負)磁気シアおよびb)高規格化ベータ(〜2.5以上)でq0 〜 1の正磁気シア,を設定した協力実験をJT-60U, JET, DIII-D, ASDEX-Upgradeで行うことが提案された.また,過去の関連放電をもとにデータベース化を行うことが提案された.高エネルギー粒子に関してITER最適なq分布について検討を行うこととした.

 カダラッシュにおいては,「輸送および内部障壁の物理」,「閉じ込めデータベースとモデリング」,「定常運転およびこうエネルギー粒子」の三トピカルグループの会合が,総数約70名の参加のもとに開催された.短時間の合同会議や複数グループ合同の会議,およびいくつかの小作業グループ会議が並列に行われた.カダラッシュはITER誘致の候補となっているので,全体会議においてEU ITER Site StudyプロジェクトリーダーP. Garin氏がITER誘致に関して説明したり,近郊のマノスク市の招待で開かれた ITPA 晩餐会では市長が列席し挨拶するなど候補地の意気込みが感じられた.

(author's e-mail: ide@naka.jaeri.go.jp)




7.「SOLおよびダイバータの物理」トピカルグループ第2回会合


 IAEA国際会議後の10月21〜23日に,ローザンヌプラズマ物理研究センターで会合が開催された.日本,EU,USA,ロシアの研究機関およびITER国際チ−ムから合計25名出席し(日本からの参加者は3名),31件の発表と議論を行った.既設装置では,JT-60U, JET, ASDEX-Upgrade, TEXTOR, Tore Supra, DIII-D, Alcator C-MOD, TCV, MAST, NAGDIS-IIから,実験結果およびダイバータ・コード解析の最新の成果が発表された.

 核融合炉の設計と運転に必要な物理検討課題のうち,以下の研究の進展を中心に討論した.

(a) ELMおよびディスラプション発生時のダイバータ板への熱負荷の評価:SOLへ放出されたELMエネルギーの輸送はイオンの対流モデルに近いこと,さらに,このモデルによりJT-60U, JET, ASDEX-Upgradeにおける熱流の照射時間の違い(0.1-1ms)が説明できることなどがまとめられた.

(b) SOLでのプラズマ流と拡散機構の解明:第一壁付近まで広がるSOLプラズマ分布をDIII-DとAlcator C-MODで比較した結果,2つの装置間での拡散係数とピンチ速度がそれぞれ同程度であることなどがわかった.

(c) JET,TEXTORの炭素材ダイバータ板におけるトリチウムや重水素の蓄積量の評価を行い,実験時期により大きく違う(40倍程度)ことや,JETのダイバータ部におけるショット間での炭素膜の測定結果が示された.

(d) JET,ASDEX-UpgradeのELMyHモードにおけるセパラトリクス密度とダイバータ性能への影響の評価が進展した.

これらの結果を利用し,ELM熱負荷や(炭素壁の装置の結果からではあるが)トリチウム吸着量のITERへの外挿を試みている.また,ELMやディスラプション発生時の第一壁への粒子束と熱負荷を高速測定し評価を行い,ITERでの第一壁へのパルス的な熱負荷を予測する提案が出された.

 日本側からは4件の発表が行われた.原研(朝倉)から,(i) JT-60U原研(実験解析)とロ−レンスリバモア・グル−プ(シミュレーション)が中心にまとめているプラズマ流の発生機構の解明が進展(プラズマ・ドリフトを考慮すると観測されたSOLプラズマの逆流が説明可能であることなど)したこと,(ii) ELMにより放出されるエネルギーの評価を改善したこと,が発表された.

 名古屋大学(高村)から,ダイバータ・シミュレ−タNAGDIS-II を使用した実験の結果:(iii) タングステン表面下でのバブル形成が,ヘリウム原子の拡散により比較的深い場所(数μm)で成長すること,(iv) ヘリウムと水素混合プラズマにおける炭素ダスト生成,が報告され連続照射の重要性が指摘された.

 また,ITER国際チ−ム(嶋田)から,ITERのオペレ−ションとダイバータ性能の評価に関する検討の進展(ヘリウム・重水素弾性散乱を考慮すると,ITERの炉心性能評価がQ=10から14へ改善が期待されることなど)について発表された.

 次回(第3回)会合は,2003年のEPS後にサンクト・ペテルスブルグで行う予定である.第4回会合は,11-12月に日本での開催(開催地は検討中)を予定している.さらに,ITER Physics Basisの発表後(1999年以後)の成果を2003年にまとめ,Nuclear Fusion 誌へ投稿する計画を討議した.

 会合のサマリ−,発表資料,本件グループ活動によりまとめられた成果の発表は,WEB http://efdasql.ipp.mpg.de/divsol/(注:passwordが必要.担当委員へ連絡を)に掲載されている.

(author's e-mail: asakuran@fusion.naka.jaeri.go.jp)



8.「計測」トピカルグループ第3回会合


 「日本国内の燃焼プラズマ計測に関する研究のプログレス会合」(9月17日〜18日午前)に続けて,「第3回ITPA計測トピカル物理グループ会合」(9月18日午後〜21日)が核融合科学研究所で開催された.日本から上記委員8を加えて25名,EUから2名,ロシアから4名,USAから2名,ITER国際チームから7名,合計40名の参加者があった.

8.1 日本国内の燃焼プラズマ計測に関する研究のプログレス会合

 日本国内での,燃焼プラズマ計測およびITER計測に関する最新成果について,東北大,神奈川大,名古屋大,中部大,同志社大,九州大,核科研,原研から計20件の発表があり,アルファ粒子計測,レーザー散乱計測,レーザー干渉/偏光計測,大強度FIRレーザー開発,中性子計測,ボロメータ計測,X線計測,プラズマ制御と計測,データ処理,計測機器要素に対する中性子・γ線照射効果等について,各極のITPAメンバーおよびITER国際チームメンバーも交えて活発な議論が行われた.

8.2 第3回 ITPA 計測トピカルグループ会合

 a) 全般的議論

 USAの燃焼プラズマ計測開発の進め方(Snowmass meetingの報告),およびFIREの計測開発の現状についての報告,およびITER計測の現状報告.

 b) ITER計測の設計の進行状況報告

 電磁気計測,および真空容器内設置計測器の設計報告と,垂直ポート中性子分布計測装置,およびその他計測装置の配置調整設計についての報告が行われた.

 c) ITER計測の計測要求と整合性(正当性)の議論

 今回は「高エネルギー粒子,加熱および定常運転」,「周辺およびペデスタルの物理」,「閉じ込めデータベースとモデリング」,および「輸送と内部障壁の物理」のITPA各トピカルグループからの出席を得て,計測トピカルグループとの合同会合を行う時間を設け,各グループの計測要求とITER計測計画との整合性を議論した.他グループからは,周辺プラズマの領域を0.9aから0.8aに広げる必要があり,空間分解能に関して今の計画より細かく計測する必要があるとの指摘があった.今後,計測装置の優先度,コストの面も考慮し,整合性を図るとともに,議論を継続することとした.10月のIAEA会議の後に開かれる各グループのITPA会合の中で計測要求を議論してもらい,まとめを作ることとした.

 d) 計測最優先課題の進行状況報告

 計測用プラズマ対向第1ミラーに関する調査および試験/実験についての報告があったが,今回は第1ミラーワーキンググループの議長が不参加であったこともあり,大きな進展は報告されなかった.ただし,今後JETをはじめ各プラズマ実験装置にサンプルミラーを設置してデータを収集する実験を開始する計画が確認された.今後貴重なデータが得られると期待される.

 アルファ粒子計測については,次回の会合で詳しく議論することになった.また,電流分布計測用遠赤外レーザ偏光計,MSE偏光計の設計が順調に進んでいること等が報告された.

 e) 各極の燃焼プラズマ計測開発の報告

 日本に関しては,まとめて1日半報告を行なったので,EU,ロシア,USAからの報告があった.EUからは,D. Campbellが,EFDAのフレームワークの中でITERを視野に置いた計測開発計画を示した.USAからは,リチウムビームを用いた周辺電場計測等のDIII-Dの最新計測の概要,JETとNSTXで進めているアルファ粒子計測開発の概要が紹介された.また,ロシアからは現在進めている計測開発の項目(Hα計測システム,X線検出器,中性粒子検出器,中性子検出器等)の紹介があった.

 f) 各ワーキンググループの報告

 6個のワーキンググループがあるが,今回は「中性子計測」と「照射効果」のワーキンググループから詳しい報告があった.

 中性子計測に関しては,装置の体積が大きいことから以前から議論になっていたMPR(中性子をポリエチレンに当て,その反跳陽子のエネルギーを磁場により分析する装置)のITERへの適用の是非の結論は出なかった.次回までにさらに検討することにした.また,中性子計測器の感度較正について,室温で中性子源を真空容器内に入れて較正してもITERの運転温度では,真空容器,コイルサポート,クライオスタット等の熱膨張の違いにより,各部分に開けた計測用貫通孔がずれて,正確な較正ができないことが問題となった.今後の最優先検討事項として,具体的に検討を進めることになった.

 照射効果については,照射誘起起電力について,実験および理論的検討が進み,ITER電磁気コイルの設計のめどがついたことが報告された.

 g) その他

 D. Campbell氏が,EFDAのフレームワークの中で,EUにおけるITERを視野に置いた計測開発計画を示した.長期計画に基づき,各研究機関にタスクを割り当てて,組織的にITER用計測機器の設計開発,および計測用真空シール窓等の計測機器要素のR&Dを進める計画が進行している.USAもSnowmassでの会議を通してUSAでの燃焼プラズマ計測への取組を組織的に進めようとしている.

日本からITER計測へ貢献するためには,さらに組織的取組が必要だろう.

 今後の会合予定として,第4回会合(2003年2月17〜21日,イタリア,パドア)ではアルファ粒子計測に関して特別セッションを設けて詳しく議論する.また第5回会合を2003年のEPS(サンクト・ペテルスブルグ)後に予定している.

(author's e-mail: sugie@naka.jaeri.go.jp)


Table 1 各トピカル物理グループの会合予定

トピカル物理グループ
次回会合日程
場 所

調整委員会

2003年10月2-4日

サンデイエゴ(米国)

輸送と内部障壁の物理

2003年4月8-12日

サンクト・ペテルスブルグ
(ロシア)

閉じ込めデータベースとモデリング

2003年4月8-12日

サンクト・ペテルスブルグ
(ロシア)

周辺およびペデスタルの物理

2003年4月14-17日

原研那珂

SOLおよびダイバータの物理

2003年7月14-17日

サンクト・ペテルスブルグ
(ロシア)

MHD, ディスラプションおよび制御

2003年7月14-16日

サンクト・ペテルスブルグ
(ロシア)

定常運転および高エネルギー粒子

2003年7月14-17日

サンクト・ペテルスブルグ
(ロシア)

計 測

2003年2月17-21日

パドア(イタリア)

2003年7月14-18日

サンクト・ペテルスブルグ
(ロシア)



最終更新日 2003年4月1日
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