最終更新日:2021.7.1

 このたび、本学会の会長を拝命しました竹入康彦です。2021(令和3)年7月より2年間務めさせていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。


さて、本学会は、プラズマに関連する広範な学術領域を共通基盤として、核融合エネルギーの実現をめざした研究活動を中核に、宇宙プラズマ、材料科学、生命科学等の分野に拡がりを持つ、基礎研究から応用・開発研究にわたる幅広い研究活動を行う「プラズマ・核融合分野」の研究者コミュニティです。本学会が創設された1980年代は、核融合の実現をめざした高温プラズマ研究が中心でしたが、この間、低温プラズマ研究の大幅な進展に伴う材料分野、医学・生命分野、農学分野等へのプラズマ応用研究の展開、基礎プラズマにおける宇宙・天文分野等との連携による学際研究の発展、核融合炉の設計・建設をめざした工学研究の拡大等により、「プラズマ・核融合分野」は非常に幅広い研究分野を包含するようになりました。そこで本学会では現在、関連する広範な研究分野を基礎、応用、核融合プラズマ、核融合炉工学の4つの領域に分けて、それぞれの特性に応じた専門性の高い学術交流活動を行うとともに、領域間の連携を通した学際化を図っています。


こうした広範囲にわたる研究領域の活動に対して、本学会の役割はますます重要になってきています。本学会の果たすべき使命として、会員間の交流を活性化して研究活動の促進を図り、研究分野を発展させるとともに新しい研究分野の開拓を促し、また、次世代へ向けた人材育成を支援することが求められています。


このような状況の中、学術研究交流の促進に向けて、本学会の中核事業である年会のさらなる充実を図ります。年会は現在、領域制に基づいて企画・立案されていますが、各領域がそれぞれ関連している他分野との連携企画を発展させるなど、研究交流のさらなる活性化を進めます。また、産業界からの参加を促し、研究者、学生と産業界が交流する場を企画するなど、年会をさらに充実させるよう検討します。


 昨今のコロナ禍の下、昨年度の年会に続き、本年度の年会もオンラインによる開催となりますが、今後の年会の開催方法として、アフターコロナを見据えて、現地参加とオンライン参加を併用したハイブリッド方式の検討を進めています。来年度の年会は富山市で開催する予定ですが、年会の充実へ向けて、オンライン参加を併用することのメリットを活かしたハイブリッド方式での開催をめざします。


 「学会誌「プラズマ・核融合学会誌」」の充実も、学術研究交流を促進する上で非常に重要です。引き続き、プロジェクトレビュー等の会員の関心が高いトピックスや他分野の専門家によるレビューなどの企画により、研究交流の活性化に貢献します。また、国際的なアイデンティティを高める上で、日本から世界への研究発信をしっかりと行うことは重要と考えており、英文論文誌Plasma and Fusion Research (PFR)の国際学術誌としての存在価値を高める取り組みを継続して行います。領域制に基づいた質の高いレビュー論文や年会の企画に基づいたテーマ論文などの企画、学会賞との連携強化等を通じて、新規性、独創性の高い論文を増加させ、世界に発信させていきたいと思います。そのために、アジア地区からの論文投稿の促進を図るなど、国際論文誌としての評価を高める取り組みを強化します。


 本学会が関連する「プラズマ・核融合分野」の将来へ向けた発展のためには、若い世代の人材獲得と人材育成が必須です。人材獲得には、プラズマ・核融合という研究分野を若い世代に広く認知・理解してもらうことが必要であり、公開講座や科学教室、高校生シンポジウム等を本年度も継続して開催します。また、文部科学省、大学、研究機関等が共同して設置した「アウトリーチヘッドクォーター」の行う活動に積極的に協力し、プラズマ・核融合研究に関する社会へ向けた情報発信を強化していきます。特に、高校生シンポジウムに関しては、これまで構築してきた大学・研究機関の協力体制をベースに、コロナ禍の中での実施方策を関係者間で十分検討して進めます。さらに、学生・大学院生の交流の場として発足し、大学院生が中心となって企画・運営している「若手フォーラム」活動を引き続き支援します。一方、「男女共同参画活動」や「仕事と生活の調和」の実現をめざした取り組みにも継続して取り組んでいく予定です。


 世界は今、2050年の温室効果ガスの実質的な排出ゼロ(カーボンニュートラル)をめざして、様々な取り組みが検討・計画され、実行されようとしています。また、国連の定める持続可能な開発目標(SDGs)に向けた研究開発も推進されています。本学会は、これらの課題に対して、核融合のみならず、「プラズマ・核融合分野」として深く関わっており、様々な幅広い観点から取り組むことができます。こうした課題に「プラズマ・核融合分野」がリーダーシップを発揮して、他の分野と協力して取り組むことも必要ではないかと思います。


本学会をさらに活性化させて、学会員のみなさまの活動を支援し、「プラズマ・核融合分野」の発展に貢献してまいりたいと思います。ご意見やご提案がありましたら、理事または学会事務局までお寄せ下さい。学会活動の推進がみなさまの研究のさらなる発展に貢献できれば幸いです。


2021(令和3)年7月
一般社団法人 プラズマ・核融合学会会長  竹入康彦