核融合炉開発における課題マトリクス

- 趣旨とその利用 -

第4回核融合エネルギー連合講演会 プログラム委員長 西原功修

1.経緯と概要

 プログラム委員会において,第4回連合講演会の性格付けについて次のような議論がありました。

-本連合講演会では,ITERが建設されようとしている状況を踏まえ,核融合研究開発の現状と日本の核融合研究開発の将来を議論したい。そのために,核融合炉を最終目標とした「共通の課題を整理したマップ」を各自作成し,その上で各方式の現状と将来展望を議論する-

 具体的には,各セッションのコーディネーターが各講演者にこの主旨を説明し,「共通の課題についてのマップ」を両者で共同で完成させる。各講演者はこの主旨に沿った評価をできる限り各講演で含めていただきたいと考えます。それにより,参加者が共通の基盤に立った発展的な議論ができるようにしたいと考えています。皆様のご理解とご協力をお願いいたします。


連合講演会(新しい展開に向けて)プログラム構成の考え方:

1) 連合講演会においては,核融合エネルギー開発における原型炉をめざした,「日本全体のロードマップ」を議論したいと考える。

2) 各方式における原型炉につながるための研究計画で,マイルストーンとクリティカルな課題をどう設定し,それらをどう解決しようとしているのか話してもらう。(What & How)

3) 経済性,安全性の観点から魅力的な動力炉につながる原型炉の条件,共通の評価基準を明らかにする。

4) 以上のことから,各セッションの役割を以下のようにアレンジする。

a) 核融合炉に必要な炉心プラズマを確立するのに必要なマイルストーンと最もクリティカルな issues は何かを明らかにする。またそれはいつ,どのように解決しようとしているのかも示す。(講演1, 2,パネル討論1)

b) 各方式における総合燃焼実験炉(ITERに相当)を実現するためのマイルストーンと,どのような目的でどのような装置を考えているのかを明らかにする。(講演1, 2,パネル討論1)

c) 核融合炉を実証するためのクリティカルな炉工学,それを達成する研究戦略は何か?どのように解決しようとしているのかを議論する。(シンポジウム1)

d) 核融合炉が経済性,安全性,信頼性,システムの成立性の点から魅力的な動力炉につながる条件は何かを議論する。(パネル討論2)

これらの主旨を反映させるために,講演会全体を通して,参加者が連合講演会のテーマを一目で見渡せるマップとして「核融合炉開発の課題マトリクス」(以下「マトリクス」)を作成した。


2. 「核融合炉開発の課題マトリクス」の位置付け
 2.1 「マトリクス」の簡単な説明:

1)課題(第三段階基本計画にあるキーワードを元に補充)と核融合炉開発の方式を行と列にする。

2)研究開発の目標をどこに置いているかを念頭に,各行列要素(a〜j, 1〜n)の上にそれぞれクリティカルな課題と重要度を丸の大きさで示してもらう。できれば,講演は丸の大きいところに重点を置き達成の可能性についても話していただく。

3)クリティカルな度合いは以下の基準に従い5段階で表示する(丸の大きさ):

5. 困難な課題であり,今後の新しい展開が必要

4. 困難な課題を含み,集中的な研究が必要

3. 課題が残されており,さらに研究が必要

2. 解決の見通しはついているが,研究が必要

1. 既存技術で解決可能

 さらに,すでに着手しているかどうかを色丸(着手)と白丸(未着手)で表現する。

4)ポスターで講演を補完する発表がある場合は”P”を付けて表示する。

 各々の研究開発においては,研究組織・グループの中で統一的,有機的によく整理してもらい,講演で言及できない課題についてポスター発表などにより補完する。ある行列要素について時間的にも一人では大変な場合,他の専門家のポスター発表等によるカバーを依頼し,講演の中でその旨触れる。


2.2 「マトリクス」の使い方:

このマトリクスは,

1) 講演会の冒頭でマトリクスを解説し,参加者に聞き所を理解していただく。
2) 各講演やポスター発表においてもマトリックスのどの行列要素に繋げる研究であるか(存在意義)を強調するために各発表ごとにこのマトリクスを提示する。

ために用いる。




図1・マトリクスの例(ただしこの例は具体的な方式を想定したものではありません)