令和4年度 学会賞受賞者第39回年会クロージングにて表彰式を開催しました[2022/11/25]

第 27 回 技術進歩賞

「先進核融合装置プラズマ加熱用低周波数ジャイロトロンの開発研究」
受賞者: 假家 強(筑波大),南 龍太郎(筑波大),今井 剛(筑波大学名誉教授),出射 浩(九大),恩地拓己(九大)
* プラズマ・核融合学会誌 Vol.93, No.3, 146-149 (2017)

【選考理由】
受賞者らは,高出力・定常運転可能な三極管ジャイロトロンの開発が可能な知見・技術を有する世界でも極めて少ないグループで,その経験・知見を活かし,世界ではじめて MW 級の低周波数ジャイロトロンを開発した.このジャイロトロンをガンマ 10/PDX,QUEST,ヘリオトロン J に適用し,信頼度の高い高出力運転を実証した.この結果は世界的にも例がなく,大きなインパクトを与えた.ST による原型炉開発も世界的に進められており,今後低周波数ジャイロトロンのニーズは高まることが予測される.事実,受賞者の開発した 2 周波数ジャイロトロンは,英国 UKAERA の MAST-U での ECH/ECCD 装置で採用が決定した他,米国 PPPL の NSTX-U でも採用が検討されている.以上の理由から「技術進歩賞」に値すると判断できる.

第 27 回 技術進歩賞

「過渡的・突発的プラズマ現象解明に向けた高時空間分解能トムソン散乱計測装置の開発」
受賞者: 安原 亮(NIFS),舟場久芳(NIFS)
* 第 38 回年会招待講演 23Ca01 (2021)

【選考理由】
本研究で対象としている非協同トムソン散乱は,散乱断面積が小さく,さらに波長依存性もない.微弱な散乱信号をいかに大きくするかはトムソン散乱計測を行う上での共通の技術的課題となる.一方でプローブレーザー(ジュールエネルギー級に限られる)は熱排出の問題があり,ジュール級のエネルギーは数 10 kHz の繰り返しが困難である. 受賞者らはこの問題に対して,従来型のマルチパルス方式や,複数のレーザーを使用する方式とは一線を画す方法 により解決(を通り越して革新的な進歩)を達成している.これにより(繰り返しではない)単発プラズマ現象中 の電子密度・電子温度の時間進展を,μ秒オーダーで可能としており,明確な技術的進歩である.受賞者らはさら にこの計測技術を実際に LHD に適用し,これまでに詳細な計測がされていなかった,溶発現象,プラズマ崩壊, ECH 立ち上がりなどの Transient な現象を明らかにした.例えば.マイクロ秒オーダーで変化する水素ペレットの 溶発現象を,電子温度のマイクロ秒オーダーでの時間進展(さらに多点計測)として実際にとらえた結果は,計測 技術の進歩に基づいた新たな知見を提供するものである.一連の計測技術開発とそれを用いた研究成果は,「技術 進歩賞」に十分に値するものと判断できる.

第 27 回 技術進歩賞

「微粒子に蓄積するトリチウムの測定技術開発と JET で生成されたダスト分析への適用」
受賞者: 芦川直子(NIFS),大塚哲平(近畿大),鳥養祐二(茨城大),朝倉伸幸(QST),増崎 貴(NIFS)
* プラズマ・核融合学会誌 Vol.96, No.1, 2-5 (2020)

【選考理由】
受賞者らは,イメージングプレート法と電子線プローブマイクロアナライザを利用して,微粒子に蓄積されているトリチウム量,およびそれら元素とトリチウム量の関係性を明らかにする技術を世界に先駆けて開発した.この技術を用いて JET(英国カラム研究所)で 2011 年から開始された ITER Like Wall (ILW) 実験の第 1 期と第 3 期後,および2009年まで実施された 炭素壁実験後にダイバータ領域から採取された微粒子の分析を行い,トリチウム蓄積の特徴を明らかにした.核融合炉内のトリチウムインベントリーを評価することは,将来の核融合発電炉を設計する上で必要不可欠であり,特に ITER での炉内トリチウム蓄積予測は,ダイバータ材を炭素からタングステン(W)に設計変更するほど重要な問題であった.本分析技術は,シンプルな構成でありながら重要な情報も得られ,世界的な展開も期待でき,将来の核融合発電炉を設計する上で必要不可欠な情報が得られると期待できることから,「技術進歩賞」に値すると判断できる.

第 27 回 学術奨励賞(伊藤早苗特別賞)

受賞者:成田絵美(QST)
「機械学習を用いた核融合プラズマの乱流輸送モデリング」
*第 38 回年会招待講演 24Cp01 (2021)

【選考理由】
受賞者は,トカマクプラズマ中の乱流がもたらす輸送に着目し,ニューラルネットワークを用いて熱輸送だけでなく新たに粒子輸送を含めて,温度・密度分布を包括的かつ効率的に求める数値解析手法を開発した.さらに大規模な計算機資源を必要とするジャイロ運動論シミュレーションにあって,速度分布空間での変化を畳み込みニューラルネットワークによって画像解析することから,乱流輸送の飽和状態到達時間が予測できることを示した.いずれも,プラズマ輸送の物理の深い理解に裏付けられた機械学習の応用として極めて独創性が高い顕著な成果である.今後の核燃焼プラズマを対象とする研究への貢献も大いに期待でき,「学術奨励賞」に値すると判断できる.

第1回 学会活動奨励賞

受賞者:清水悠加(静岡大)
「「男女共同参画委員会参加企画「女子中高生若手夏の学校 2022」への貢献」 」

【選考理由】
清水氏は,女子中高生夏の学校(㻶㻿㼀 支援事業)において,プラズマ・核融合分野に関する情報が集約された資料を主体的に作成するとともに,対話形式により質問しやすい環境を醸成し,「研究者・技術者と話そう」セッションを成功に導いた.これらは,プラズマ及び核融合に関する知識の普及・啓発や広報活動に貢献しており「学会活動奨励賞」に値すると判断できる.