令和6年度 学会賞受賞者第41回年会懇親会にて表彰式を開催しました [2024/11/18]

第第29回 技術進歩賞

受賞者:森下侑哉(京大),村上定義(京大),横山雅之(NIFS),釼持尚輝(NIFS),舟場久芳(NIFS), 山田一博(NIFS),水野嘉識(NIFS),長原一樹(NIFS),奴賀秀男(NIFS),關 良輔(NIFS), 長壁正樹(NIFS)
「データ同化手法を用いた核融合プラズマのデジタルツイン予測制御システムの開発」
*第40回年会招待講演27Bp09,他

【選考理由】
受賞者らはデータ同化の技術を応用した核融合プラズマの予測制御システムを構築し,その高い制御性能を世界に先駆けて実証した.データ同化はデータ科学からの現実世界へのインパクトを持つ技術として,気象や海洋現象の予測に成果をあげてきている.核融合プラズマにおいても物理モデルによる予測精度にはまだ限りがあり,その複雑な振る舞いを予測・制御する手法の確立が課題となっている.受賞者らはシミュレーションとリアルタイムの観測をデータ同化によって組み合わせ,LHDにおいてECHのパワー制御による電子温度の制御に成功した.特に,温度と温度勾配を独立に制御しうる性能は,物理実験に格段の進歩をもたらすものである.これらの成果は核融合炉制御技術への発展が大いに期待できることから,「技術進歩賞」に値すると判断できる.

第第29回 技術進歩賞

受賞者:河野繁宏(QST),石川正男(QST),隅田脩平(QST),小渕 隆(NIFS),小川国大(NIFS), 磯部光孝(NIFS),伊藤大二郎(東芝エネルギーシステムズ),矢澤博之(東芝エネルギーシステムズ), 黒崎将史(東芝エネルギーシステムズ),布谷嘉彦(QST)
「自己崩壊αパルスを利用した核分裂検出器の新たな健全性確認方法の開発」
*Plasma and Fusion Research Vol.19,1405015(2024),他他

【選考理由】
本研究は,中性子によるウランの核分裂反応を利用して中性子束を検出する核分裂検出器を対象として,従来ノイズと認識されていたウランの自己崩壊αパルスに着目し,これを検出器の健全性確認へ利用することを提案したものである.LHDに設置されている核分裂検出器を用いて,自己崩壊αパルスをノイズと分別して検出可能であることを見出した.ITERを始めとするDT反応を伴う装置での使用に向けては,今後の引き続く確認が必要と思われるが,その着眼点と,LHDにおける実現可能性を示唆する実データの提示には卓越したものがある.核分裂検出器は,原子炉や原子力研究施設でも一般に使用されているものであり,関係分野への波及も期待できるので,本研究の成果は「技術進歩賞」に値すると判断できる.

第29回 学術奨励賞(伊藤早苗特別賞)

受賞者:金 史良(京大)
「トーラスプラズマにおける雪崩輸送と分布形成の実験研究」
*第38回年会口頭発表 22Ca04(2021)若手学会発表賞受賞,他

【選考理由】
雪崩輸送は,従来の定常的な乱流輸送とは一線を画する新しい概念である.この輸送は間欠的・突発的に発生するもので理論的には予想されていたが,実験観測がほとんどなかった.雪崩輸送の観測とその定量評価に成功したことは高く評価できる.この輸送は,従来の乱流輸送では理解できない輸送の性質(輸送の硬直性,内部輸送障壁形成,加熱に対する乱流応答)を説明する物理機構として極めて有望である.この機構を解明することで,将来の核融合炉の性能予測の大幅向上が期待され,核融合研究へのインパクトは大きいことから,「学術奨励賞(伊藤早苗特別賞)」に値すると判断できる.

第29回 学術奨励賞(伊藤早苗特別賞)

受賞者:林 祐貴(東大)
「Magnum-PSI非接触プラズマにおけるリサイクリング粒子がパルス緩和に与える影響」
**第38回年会口頭発表 22Cp01(2021),他

【選考理由】
受賞者は直線型プラズマ装置で,定常プラズマへのパルスプラズマ重畳により,過渡的な熱・粒子束と非接触プラズマの相互作用に関する実験を行い,深い非接触プラズマ状態には至らない比較的低い中性ガス圧条件でも,パルスプラズマによるターゲット板への粒子束が低減されることを見出した.さらに受賞者は,パルスプラズマ粒子束がターゲット板上で中性化したリサイクリング粒子の動圧が後続のパルスプラズマ粒子束を低減していたことをシミュレーションにより明らかにした.この成果により,実機におけるELMと非接触プラズマの相互作用の理解と予測,制御の進展が期待されることから,「学術奨励賞(伊藤早苗特別賞)」に値すると判断できる.

第3回 学会活動奨励賞

受賞者:富所風花(函館工業高等専門学校 3 年)
「総合研究大学院大学・社会連携事業「次世代研究者育成をめざした地域密着型体験プログラム」等に基づく核融合分野での普及・啓発活動に対する貢献」

【選考理由】
受賞者は,2022年度に函館工業高等専門学校で開催された総合研究大学院大学・社会連携事業「次世代研究者育成を目指した地域密着型体感プログラム」に参加し奨励賞を獲得した.このプログラムに参加した参加者の一人が,受賞者がプログラムで投影したプレゼンテーション動画の出来に感銘を受け,国際エネルギー機関(IEA)ステラレータ・ヘリオトロン技術協力プログラム(SH-TPC)の広告動画の作成協力を依頼した.受賞者の協力の下に作成した広告動画は好評を得て参加者増につながった.本貢献に対してSH-TPCの議長であるRobert Wolf博士は,受賞者へ感謝状を送付した.以上のSH-TPCの広告動画作成と参加者増への貢献,加えて議長からの感謝状獲得は,プラズマ・核融合に関する知識の普及・啓発に十分な貢献をしたと考えられるため,「学会活動奨励賞」に値すると判断できる.