2025年度「吉川允二記念核融合エネルギー奨励賞」受賞者
吉川允二記念核融合エネルギー奨励賞は、ITER計画や幅広いアプローチ活動(BA)などに代表される核融合エネルギーの実現に寄与しうる国内外の研究・技術開発活動、調査活動、社会連携・貢献活動等のなかで、若手人材による優れた成果を顕彰するものです。
下記の活動分野に対し、2025年度は、7件の応募がありました〔分野1)1件、分野2)6件〕。 日本原子力学会核融合工学部会およびプラズマ・核融合学会合同選考委員会において厳正な審査を⾏い、奨励賞3件が決定されました。
2025年度の選考委員は次の方々です(敬称略)
日本原子力学会核融合工学部会:横峯健彦(委員長・京都大学)、波多野雄治(東北大学)、林 巧(量子科学技術研究開発機構/(株)アトックス)
プラズマ・核融合学会:井手俊介(量子科学技術研究開発機構)、藤田隆明(名古屋大学)、井戸 毅(九州大学)以上6名
林 祐貴 氏 (東京大学・大学院新領域創成科学研究科)
受賞テーマ:ITER級高密度非接触プラズマの熱流減衰評価と熱パルスに対する再結合プラズマの動的応答に関する研究
選考理由:林氏は、核融合炉の最重要課題であるダイバータ熱負荷低減に関し、緻密な実験と解析により卓越した成果を挙げた。特に、Pilot-PSI 、Magnum-PSI において、初のプローブ計測により熱流束減衰長や熱パルス印加時のリサイクリング粒子の挙動を解明した。また、非接触プラズマの応答特性の中性粒子・不純物依存性を明らかにするなど、物理過程の理解を大きく進展させた。 さらに、海外共同研究の知見を活かした国内実験拠点の形成や、広範な研究者への実験機会の提供を主導しており、原型炉開発に向けた国内研究の進展に寄与する活動も高く評価される。今後の基礎研究の深化と、当該分野における指導的役割が強く期待される。
受賞者の抱負:この度は栄誉ある賞を賜り、大変光栄に存じます。対象となった研究は、博士課程から進めているオランダDIFFERとの共同研究に基づくものです。ご推挙いただいた先生方、いつも有益なご助言とご議論をいただいている共同研究者の皆様へ厚くお礼申し上げるとともに、私の共同研究申し入れを快く受け入れていただいたDIFFERの関係者の方々に深く感謝いたします。
本研究では、核融合炉の実現に向けた重要課題の一つであるダイバータ熱負荷低減を目的として、非接触プラズマの形成・維持および過渡的熱負荷に対する応答特性の解明に取り組んできました。特に、ITERや原型炉で想定される高密度プラズマを模擬可能な直線型プラズマ装置Pilot-PSIおよびMagnum-PSIを用い、電子-イオン再結合が支配的となる低温・高密度プラズマの詳細計測を実施しました。その結果、ITER級高密度非接触プラズマにおける熱流束減衰特性の定量評価を行うとともに、ELMを模擬した過渡的プラズマ負荷に対して、反射中性粒子とパルスプラズマとの動的相互作用が熱・粒子負荷の緩和に重要な役割を果たすことを示すことができました。
この受賞を励みに、国内外の研究者との連携を通じて、より一層本分野の発展に貢献していきたいと考えております。今後ともご指導の程よろしくお願いいたします。
金 史良 氏(京都大学・エネルギー理工学研究所)
受賞テーマ:突発性輸送に着目したプラズマ分布形成の実験研究
選考理由:金氏は、核融合プラズマの性能予測を左右する「分布の硬直性」に着目し、その要因とされる雪崩現象の解明において優れた成果を挙げた。JT-60U および Heliotron-J のデータ解析を通じて、雪崩的輸送を実験的に同定するとともに、それが熱輸送や分布の形成に寄与する役割を定量的に示した点は学術的に高く評価される。 特に、突発的な雪崩輸送が内部輸送障壁(ITB)の形成や崩壊に与える影響を明らかにしたことは、閉じ込め性能の予測精度を向上させる上で極めて意義深い。一連の研究は、物理的理解を深めるだけでなく、将来の核融合炉における性能予測の不確実性低減に直結するものであり、核融合エネルギーの実現に向けた基盤的貢献として高く評価される。
受賞者の抱負:この度は、栄誉ある吉川允二記念核融合エネルギー奨励賞を賜り、誠に光栄に存じます。本研究成果は、多くの共同研究者の皆様との協力のもとに得られたものであり、日頃よりご指導、ご支援を賜っております皆様に心より感謝申し上げます。
核融合プラズマでは、乱流に起因する多様なダイナミクスが発現します。本研究では、特に突発的な輸送現象がプラズマの分布形成に与える影響について研究を進めてまいりました。これらの現象は、将来の核融合発電に向けたプラズマ制御の観点からも重要な課題であり、その理解の深化に少しでも貢献できたのであれば幸いです。
このたびの受賞を励みとし、今後も一層研究に精進してまいります。引き続きご指導、ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。
管 文海 氏(QST・六ヶ所フュージョンエネルギー研究所・ブランケット工学研究グループ)
受賞テーマ:発電実証に向けた核融合炉用水冷却固体増殖ブランケット設計の高度化
選考理由:管氏は、核融合炉の早期実現に不可欠なブランケット開発、特に水冷却固体増殖 ITER-TBM(テストブランケットモジュール)および原型炉ブランケットにおいて、設計・実証の両面から多大な貢献を果たした。 具体的には、強磁性体である低放射化フェライト鋼を用いた TBM の電磁力解析や熱機械特性の評価を行い、製作手法の妥当性を検証するなど、極めて実効性の高い成果を挙げている。これらの活動は、ITER での実績を基盤としつつ、原型炉へのスケールアップや高度化を見据えた体系的なロードマップの構築に直結するものである。 着実な研究遂行と、核融合エネルギー開発の根幹を支える工学的基盤への献身的な取り組みは、今後のさらなる進展と実用化への主導的役割が大いに期待され、高く評価される。
受賞者の抱負:このたびは、栄誉ある賞を賜り、大変光栄に存じます。本研究は、これまで多くのご指導・ご支援をいただいた皆様との共同研究の成果であり、関係各位に深く感謝申し上げます。
核融合発電の実現において、発電増殖ブランケットはエネルギー取り出しとトリチウム増殖を同時に担う中核機器であり、その成立性は核融合炉の成否を左右すると認識しております。私はこれまで、水冷却固体増殖ブランケット(WCCB)を対象として、ITERにおけるTBM試験を見据えた構造設計とその妥当性評価に取り組み、特に電磁力評価やフェライト・マルテンサイト鋼のクリープ疲労特性の解明、さらには製作・規制適合性の観点を含む総合的な設計高度化に努めてまいりました。
核融合エネルギーの実用化は長期的かつ学際的な挑戦であり、材料、熱構造・流動、電磁力、構造設計、規制科学の連携が不可欠です。本研究で培った知見を基に、これらを統合した工学的基盤の確立に寄与し、核融合エネルギーの早期実現と社会実装に貢献できるよう、今後も一層研究に邁進してまいります。引き続きご指導・ご鞭撻を賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。