会議報告

プラズマ科学シンポジウム2001/
第18回プラズマプロセシング研究会
 〜2001.1.24〜1.26 at 京都テルサ

                     現地実行委員長 斧 高一 (京大工)


1.はじめに

 

 プラズマ科学シンポジウム2001/第18回プラズマプロセシング研究会 (Plasma Science Symposium 2001 / The 18th Symposium on Plasma Processing,以下 PSS-2001/SPP-18と記述) が,去る2001年 (平成13年) 1月24日〜26日の3日間,京都において開催された.

 プラズマ科学は20世紀,宇宙,核融合,光源・レーザー・粒子ビームなどの放電応用,さらに半導体プロセシングやプラズマディスプレーパネルなど多岐にわたる分野で研究活動が展開され発展してきた.プラズマ科学シンポジウム (PSS) は,多くの学協会で活動しているプラズマの基礎・応用分野の研究者・技術者が一同に会する国内では初めての試みであり,これまで各学協会に分散して展開されてきたプラズマ科学の研究活動を総合的に把握し,21世紀におけるプラズマ科学の一層の発展と新たな展開を議論し探るとともに,異分野交流のもと各学協会等におけるプラズマ科学の研究活動を一層推進することを目的として企画された.プラズマ科学シンポジウム2001は,特に21世紀最初の記念すべき会議と位置付け,プラズマ科学研究の20世紀の総括と21世紀への展望を重視した.

 一方,プラズマプロセシング研究会 (SPP) は,応用物理学会プラズマエレクトロニクス分科会主催で毎年1月下旬に開催され,今回で第18回目を迎える.プラズマプロセシングは,種々の薄膜材料加工を効率よく行える実用的なプロセス技術としてこの20数年で飛躍的な発展を見せ,今日,材料・マイクロエレクトロニクス分野における最も重要で不可欠な基盤技術の一つとなっている.研究会では,プロセスプラズマの物理的・化学的基礎の解明およびその高精度制御と応用技術の開発をテーマに掲げ,プラズマ物理・プラズマ化学の研究者をはじめとして,原子・分子物理,薄膜・表面の物理・化学,電子工学等の多分野の研究者が一同に会してプラズマを接点とする境界分野の検討を行なうとともに,新たな問題点の発掘や新しいプロセシングの可能性を追求することを目的としている.

2.会議の準備



 本会議PSS-2001/SPP-18は,これら2つの合同会議ではあるが,異分野交流のもと充実して実り多い会議となるよう,組織委員会などの運営・実行組織は一本化して準備を進めた.主催は,応用物理学会,プラズマ・核融合学会,日本学術振興会プラズマ材料科学第153委員会の3団体で,今回は応用物理学会が開催主担当学会となり,他の2つが全面的に協力する形をとった.組織委員会委員長に佐藤徳芳 (東北大) プラズマ・核融合学会副会長,副委員長に藤山 寛 (長崎大) 応用物理学会プラズマエレクトロニクス分科会幹事長があたり,組織委員会は主催・共催の学協会を代表する計37名の委員で構成され,運営に関する決議を行った.開催実行の総括は,組織委員の中17名で構成された代表組織委員会で行われ,斧 高一 (京大) が実行委員長として総務,財務,プログラム編纂にあたった.また,応用物理学会の若手を中心に計17名で現地実行委員会が組織され,会議実行のための準備にあたった.具体的には,2000年2月の準備組織委員会を経て,4月に第1回目の代表組織委員会と現地実行委員会を開き,計2回の代表組織委員会と計4回の現地実行委員会とで準備を進めた.

 共催と後援については,15学協会 (日本物理学会,電気学会,電子情報通信学会,日本真空協会,電気化学会,日本化学会,日本セラミックス協会,表面技術協会,静電気学会,日本金属学会,日本鉄鋼協会,日本航空宇宙学会,地球電磁気・地球惑星圏学会,日本オゾン協会,IEEE Japan Council NPS-Plasma)より共催,ならびに2団体 (技術研究組合 超先端電子技術開発機構 (ASET),高分子学会) より後援としての参加を得て,プラズマ科学の総合的な学術講演会として開催する「プラズマ科学シンポジウム」にふさわしいものとなった.また,本会議の開催を広く周知するために,主催・共催学協会の学会誌への案内に加え,パンフレットやポスターの配布による一般講演・参加の呼びかけを実施し,さらにホームページの充実を心がけた.

 本会議のスタイルは,形式的には例年のプラズマプロセシング研究会を踏襲したが,実質的内容に関しては,「プラズマ科学シンポジウム」の趣旨にふさわしく,また多くの学協会から多数の方々の参加が得られる魅力的なアレンジに苦心した.第一に,プラズマ科学の多岐にわたる基礎・応用分野の研究活動を総合的に把握し議論できるよう,総合講演,指定テーマ講演,シンポジウム講演と3種の招待講演を設け,分野が異なっても,大局的立場での総合講演から徐々に詳細な理解が得られ議論が行えることを重視した (シンポジウム講演のみ2パラレルセッション).さらに,一般講演は全てポスターセッションとして3日間に分散し,各詳細に関して,時間にとらわれず活発な議論が沸騰することをねらった.第二に,21世紀におけるプラズマ科学の発展には,他の多くの先端技術分野と同様,有意義な産官学連携が必須であるとの認識から,新世紀のプラズマ研究における産官学連携のあり方に関して,産官学からパネリストを迎え,2日目にナイトセッションを設けてパネル討論を企画した.第三に,3日間の会期中いずれも基礎と応用分野の招待講演をバランスよく配置するとともに,日ごとに一定の分野の招待講演と一般講演とを集中させ,一日だけの参加者にとっても有意義な会議となるように考えた.1日目は基礎分野 (宇宙,核融合なども含む),2日目は半導体プロセス分野,3日目は環境および材料プロセス分野である.これは,会場をできるだけ交通至便の場所 (JR京都駅近くの京都テルサ) に設定したこととともに,できるだけ多くの一日参加者 (特に企業からの当日参加者) を得るための方策でもあった.

3.会議の概要



 結果,本会議PSS-2001/SPP-18は,「プラズマ科学シンポジウム」にふさわしく,多くの学協会から多くの方々の参加と (総数583名,内学生195名),多くの講演発表が得られ (総数 367件:招待講演52,一般講演 315;ただし一般講演は会議直前の取り消しが2件あった),盛会裏に会議を終えることができた.これは,会議の趣旨が理解され,取り上げたテーマへの関心も高かったことを示すものであろう.例年のプラズマプロセシング研究会の約2倍の規模であり,学生を除く参加者388名の所属は,産 (企業) 134名,官 (国立研究所など) 48名,学 (大学など) 206名と,企業の関心も高かったことがうかがえる.また1日目の夜,会場内のレストランで行われた懇親会には多数 (220名) の出席者があり,3日間のポスターセッション会場 (一般講演会場) も空調を冷房に切り替えて運転するほど熱気にあふれ,分野さらには世代を越えで活発な交流が実現した.

 以下に招待講演52件の概要を示す.

総合講演

「20世紀のプラズマ研究と21世紀への展望」 板谷良平 (京大名誉教授)

指定テーマ講演

「核融合プラズマ研究の現状と展望」 藤原正巳 (核融合研)

「宇宙プラズマ研究の現状と展望」 寺沢敏夫 (東大理)

「半導体プロセシング」 板橋直志・田地新一 (日立中研)

「マイクロマシン」 江刺正喜 (東北大未来科学技術共同研究セ)

「プラズマによる環境対策技術の現状と課題」 Jen-Shih Chang (McMaster 大工)

「熱プラズマプロセシングに輝かしい未来はあるか」  吉田豊信 (東大工) 


シンポジウム講演 (2パラレル講演; 3つの大分類,計12テーマ,各テーマ3_4件の講演)

[1]「プラズマ基礎過程の理解はどこまで進んだろうか,今後の課題は何か」

1.1 プラズマの基礎理論と実験

1.2 プラズマとチャンバー壁との相互作用
プラズマと基板表面の微細構造との相互作用
薄膜堆積のプラズマ化学

[2]「プラズマは新世紀にどのような貢献ができるだろうか」

2.1 宇宙プラズマと実験室プラズマ

2.2 アブレーションプラズマ

2.3 マイクロプラズマ

2.4 非中性プラズマ

[3]「プラズマは環境・エネルギー問題,生命科学に対してどのような貢献ができるだろうか」

3.1 廃ガス・廃棄物処理,

3.2 核融合,X線源

3.3 宇宙開発

3.4 バイオアプリケーション

 

パネルディスカッション (ナイトセッション)

「新世紀のプラズマ研究における産官学連携のあり方を考える」
また一般講演315件 (ポスターセッション) の分野別内訳は以下のとおりである.

1)プラズマ基礎 (宇宙環境,宇宙開発を含む)  50件
2)プラズマの発生・制御           40件
3)プラズマの診断・計測・モニタリング    42件
4)プラズマの素過程             5件
5)プラズマのモデリング           22件 
6)プラズマ中の微粒子            22件
7)プラズマによる薄膜形成          61件
8)プラズマによるエッチング         19件
9)プラズマによる表面改質 (イオン注入,クリーニング等) 11件
10)プラズマの光応用・発光デバイス用プラズマ      6件 
11)プラズマの環境応用                  29件
12)上記以外のプラズマ科学 (カーボンナノチューブ,フラーレンほか) 8件

講演発表の詳細は,会議中に配布したプロシーディングスを参照されたい1)


4.おわりに



 以上述べたように,本会議PSS-2001/SPP-18は,「プラズマ」 をキーワードに,国内のプラズマの基礎・応用分野の研究者・技術者が一同に集まり,プラズマ科学の基礎から,核融合などのエネルギー分野,半導体プロセスやプラズマディスプレーパネルなどの情報・電子デバイス (IT) 分野,地球温暖化ガス・廃棄物処理などの地球環境分野,人工医用材料創成などのバイオ分野 (BT),さらに宇宙開発など幅広いプラズマの応用分野にいたるまで,20世紀の総括と21世紀の展望および発展のシナリオを議論しよう,という国内ではじめての試みとして企画された.会議には多くの学協会に所属する産官学の多数の研究者・技術者が参加し,プラズマ科学の多岐にわたる基礎・応用分野に関し,20世紀の総括と21世紀の展望,異分野交流などに大きな成果を得ることができた.

 次回のプラズマ科学シンポジウムは,3年後の2004年に,プラズマ・核融合学会が主担当となり開催される予定である.といっても3年後まで待つ必要はなく,本会議の中で生まれた新しい発想や交流・連携が発展して,学術的・実用的な成果や,新しい研究開発プロジェクトのスタートなどに結びつけば,本会議の準備に当たった一員として喜ばしい限りである.

 最後に,本会議の趣旨に賛同して顧問,招待講演をお引き受けいただいた先生方,企画・実行にご尽力いただいた関係各位,一般講演・参加をいただいた各位,および寄付・広告などでご支援いただいた団体・企業各位に深く感謝いたします.

(2001年3月23日 受理)

--------------------------------------------------------------
1) 本会議のプロシーディングス (A4版,英文,全800ページ) をご希望の方は,
筆者までお問い合わせ下さい.
e-mail: ono@kuaero.kyoto-u.ac.jp



会議レポート
講演一覧
Proc. 目次
(PDF書類88 K)

JSPF Homepageへ