[会議報告一覧にもどる]


13th International Conference of
Fusion Reactor Materials
(ICFRM 13) 


佐藤紘一(京都大学)

標記会議が,2007年12月10日から14日に,ニースのアクロポリス・センターで開催されました.なお学会誌Vol.84-2月号に本報告が掲載されます。次回は2009年9月に札幌で開催されます。





 ICFRMは二年毎にヨーロッパ,日本,アメリカ合衆国で持ち回りとなっており,今回はフランス,ニースのアクロポリス・センターで行われた。ニースは地中海に面した世界的な保養地であり,街には多くのホテルが存在する。この時期でも日中は暖かく,海岸では日光浴を楽しんでいるご老人を見ることができた。

今回はITERの建設サイトが決定した後の最初のICFRMであり,ITER Business Forumも同時に開催された。そのため,会議参加者の科学者とITER Business Forumに参加する産業技術者を合わせると1000人以上が会場に集まった。また,その業者がITER建設で使う技術を各ブースにて紹介していた。水曜日の午後にはITER建設サイトの見学も行われ,ITER建設への期待感が会場全体に溢れていた。

会議の参加者としては600人以上で,口頭発表が150件以上,ポスター発表が600件以上も行われた。参加者の割合として日本人が最も多く,140人近く参加した。学生の参加者も多かったとの報告があり,今後も核融合材料研究に携わり発展に貢献してもらうことが期待される。口頭発表は,午前最初はプレナリーセッション,その後,10時半から昼休みを挟んで16時まではパラレルセッションで行われた。ポスター発表は月,火,木の16時半から18時を目安に時間が設定されていた。

 今回の会議ではITERの建設を間近に控えて,より実機に近く,実機で問題となりそうな部分に焦点を絞ったプログラム構成となっていたと感じられた。例えば,前回のICFRM-12では電子顕微鏡内での引張破断のその場観察から,照射欠陥や析出物と転位の相互作用の研究発表が多く行われた。シミュレーションに関しても同様のデータが多く発表されていた。しかし,今回は核変換により発生・あるいはプラズマの曝露によるガス原子の影響が実機では無視できないことから,材料中のヘリウムの影響に関する研究発表が非常に多いという印象を受けた。その他にも,ITERのデザインの説明がなされたり,JETでのプラズマ対向壁のCやDの堆積の問題が報告されたり,DEMOを見据えた材料戦略などの発表も行われた。高エネルギー粒子の材料への照射損傷に関連する国際会議であることから,各国の高エネルギー粒子照射場の現状の報告もあり,新しい照射場である大強度陽子加速器における陽子照射材の組織観察やTDS測定の結果も紹介された。ヘリウムバブルが形成し,材料の劣化が進むという点では核融合材料に通じるところがあり,ヘリウムと材料の関連を調べる上で新しいことが発見される可能性を秘めている。また,各国からフェライト鋼よりも新しいODS鋼の方がより良いというデータが発表された。ODS鋼に関する研究発表は日本からのものが最も多く,日本のODS鋼の研究は他国を一歩リードしているという印象を受けた。しかし,その一方で,日本からのシミュレーションによる研究発表が少ないという印象も受けた。他国では,独自にポテンシャルの開発を進めているが,日本ではそのようなことはなく,その分出てくるデータも少なく後れを取っているではないかと考えられる。

 水曜日の午後はITERの建設サイトの見学が行われた。参加者は180名を超え,建設サイトまでは会議の会場から片道約3時間かかった。ITERはフランス原子力庁CEAのカダラッシュセンター内に建設される。先に既存の施設である高速増殖炉とトカマク型のTORE SUPRAの見学が行われた。建設サイトにはまだ道も舗装されておらず,予定された土地の上に立つことしかできなかった。カダラッシュセンターに滞在していた時間は約2時間で,会場発12時半,会場着20時であった。

 バンケットは会場からバスで30分程度離れた競馬場に移動し,そこで行われた。趣向が凝らされており,競馬が全3レース行われた。一着から三着の馬を3レースとも当てれば景品が出るという形式だったが,当選者はいないようだった。次に,各賞の発表が行われ,最後に次回の会議の開催場所が発表された。次回は,2009年9月に日本,札幌で行われる。









(原稿受付 2007年12月28日)


最終更新日:2008.1.29
(C)Copyright 2008 The Japan Society of Plasma Science and Nuclear Fusion Research.
All rights reserved.