第11回核融合炉材料国際会議
(ICFRM−11)


標記会議が2003年12月7日〜12日京都国際会館(京都市,左京区)で行われました.学会誌Vol.80-02月号に本報告が掲載されます。次回は2005年秋にUCSB担当で開催される予定です.




 阿部弘亨(東大),福元謙一(東北大),鈴木晶大(核融合研)

 2004年12月7日〜12日京都市左京区宝ヶ池の京都国際会館にて,第11回核融合炉材料国際会議(11th International Conference on Fusion Reactor Materials, ICFRM-11)が行われた.世界29カ国から530名の参加があったが(日本295,ロシア39,アメリカ38,ドイツ36,中国18,韓国15,イタリア13,スイス10,フランス10,イギリス8など),これは20年余のICFRM史上,最大の参加者数である.セラミックス材料,バナジウム合金,フェライト合金などの核融合炉候補材料,材料診断,照射損傷効果,損傷理論とモデリング,共存性とコーティング,高熱流束機器材料,増殖材料など,核融合炉で利用される様々な炉材料やコンポーネントの研究開発に関する成果報告のほか,国際熱核融合実験炉ITERや国際核融合炉材料照射施設IFMIFに関する発表もあった.発表論文数は588件に上り,このうち350余の論文がJournall of Nuclear Materialsに公刊される予定である.以下に主だったトピックスを紹介する.

 照射挙動基礎・モデリング関連では桐谷メモリアルを含めて19件の口頭発表と140件あまりのポスター発表が行われた。実用鋼を意識した原子間ポテンシャル関数の開発,分子動力学研究やマルチスケールモデリング研究が中心であった。また,照射損傷素過程や格子欠陥基礎に関する実験的理論的研究や,重照射下におけるボイド形成や析出・偏析に関する研究も非常に活発であった。しかし既存の知見と整合しない理論・モデリング研究や,緻密さに欠ける実験研究も散見され,今後の発展が期待される。計算機性能の向上と実験技術の成熟期にある近年の状況を上手に活用して,実験とモデリングの両面から現象を厳密に追及する型の研究の必要性を強く感じた。

 構造材料開発ではODSフェライト鋼,SiC/SiC複合材料開発の最近の進展による成果が特に際だった。F82HおよびEUROFERを中心とした低放射化フェライト鋼では基本的材料特性のデータベースが充実し,100dpaまでの照射特性データ蓄積が報告されるなど,核融合炉構造材料としての成熟度が見られた。ODSフェライト鋼では従来の12Cr鋼開発から高クロム鋼開発への研究対象の移行が強調された。一方で接合,低温脆化,ヘリウム効果など解決すべき多くの課題が示された。SiC/SiC複合材料では加藤らのNITEプロセス開発による複合材料特性の著しい向上が注目された。また化学両論組成に近いHi-Nicalon繊維を用いたCVI-SiC/SiC複合材で良好な耐照射損傷性の向上が報告され,繊維および複合材の両面でSiC/SiC複合材料開発研究で著しい進展が見られた。バナジウム合金では高純度化と高クロム化を用いた高温機械的特性と低温脆性のバランス化による材料開発,V-Cr-Ti系合金中の水素透過挙動研究が進められ,V/Liブランケット用MHD被覆材開発の進展がめだった。

 ブランケット関連では,Fast track構想や高効率DEMO炉設計を念頭においた材料システムの開発について,その開発戦略や基礎的な開発成果に関する研究発表が多く見られた。プラズマ対向材料に関しては,ASDEX-UpgradeやJT-60Uに関する開発成果がまとめられると共に,より高い熱負荷を想定した高熱伝導材料,損耗・再堆積挙動,タングステンやボロンコーティングについての研究成果発表が行われた。トリチウム増殖材に関しては,酸化リチウム,タイタネート,リチウム-鉛,リチウム-錫等,さまざまな候補材についてのトリチウム挙動や放出実験の研究成果が発表された。ブランケット冷却材に関しては,Heガス,溶融塩,超臨界水が想定され,より高温でブランケット材料システムを構成した場合に発生する開発課題の整理が行われるとともに,高温における構造材料共存性等についての基礎的な材料開発成果に関する発表が行われた。特に,V/Liブランケット概念におけるMHDコーティング材については,Er2O3やY2O3等についての液体リチウム共存性やコーティング手法開発が行われるとともに,in-situ生成について,実験およびモデリングの両面からの解明が進められた。

(原稿受付日:2004年1月20日)








 





最終更新日:2004.1.29
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