第19回IAEA核融合エネルギー会議

標記会議が2002年10月14日〜19日にフランスのリヨンで開催されました。以下に会議報告を記します。なお学会誌Vol.79-1月号に本報告が掲載されています。次回 (2004 年) はポルトガルで開催される予定です。

1. 磁場閉じ込め
1.1 ITER関連 1.2. トカマク実験 1.3. ヘリカル系実験
1.4. その他の磁場閉じ込め実験 1.5. 磁場閉じ込め理論

2. 慣性核融合関係

3. 核融合装置工学関係 

 

1. 磁場閉じ込め

1.1 ITER関連

井手俊介(日本原子力研究所)

 ITERに関する発表は33件あったが、以下、主な話題について述べる。ITERにおける運転シナリオの物理検討についての報告があった。実験から得られた閉じ込め時間の経験則を用いると標準運転におけるQが10以上の放電は可能であることが示された。これは無次元の比例則および理論にもとづいた輸送モデルによる検討においても確認された。さらに,HeのDやTとの弾性散乱を考慮するとHeの排気効率が3-5倍改善され,それによりQが10->14と改善しうることが示された。理論にもとづいた解析では,Q≧10を得るためには4 keV前後のペデスタル温度が必要であることが示されたが,これはスケーリングの範囲内である。タイプI-ELMに関しては,内側入射ぺレットを用いることによりELM強度を下げうることが示された。このときでも,ペデスタル温度は上記のレベルに素早く復帰しうることが示され,コアの閉じ込め性能を維持しつつELM強度を下げ得ることが期待される。定常運転シナリオに関しては,HH98(y,2) ≧ 1.3,βN ≧ 2.6といった比較的modestな性能でQ = 5の定常運転が可能であることが示された。このベータ領域であれば,二重壁構造とサドルコイルで抵抗性壁モード(RWM)は対応可能であると考えられる。さらにQ 〜 8で0.7 GW核融合出力での約300秒の定常運転(受熱で制限されている)の可能性が示された。ただし,βN = 3.6(no-Wall限界以上,理想Wall限界以下)が要求される。また,同位体比0.2あるいは0.8で1 GW核融合出力プラズマ相当条件(ベータ,パワー,粒子排気)をシミュレート可能であることが示された。工学面では,超伝導コイル,真空容器,ブランケット,ダイバータ等の設計/試作において,順調に進んでいるとの報告があった。加熱装置においては1 MeV負イオン源中性粒子入射装置の開発状況(原研,カダラッシュ)やJT-60Uでの0.355 MeV,2.6 MW,10秒入射結果,170 GHzジャイロトロンの開発状況(170 GHz:0.9 MW/9.2秒,0.5 MW/30秒)やJT-60Uでの110 GHzジャイロトロン4本で3 MW/2.7秒入射に関する報告があった。


1.2 トカマク実験

井手俊介(日本原子力研究所)

 本会議での発表総数は395件、そのうち磁場閉じ込め実験に関するものが211件。さらにそのなかで、トカマク実験は168件であった。もとよりすべてを網羅するのは困難なので、主な話題を紹介するにとどめる。大きめの装置に偏っていると感じられたらご容赦いただきたい。大型/中型トカマクにおいては,ITERおよび炉心プラズマをめざした先進運転シナリオ(高閉じ込め/高ベータ/高自発電流を活かした定常運転)に関する研究の進展についての報告が多くなされた。内部輸送障壁を伴う正,負磁気シア放電(JT-60U,JET,DIII-D),あるいは伴わないもの(ASDEX Upgrade (AUG),DIII-D)それぞれにおいて進展が報告されたが,印象としてはパラメータの向上よりも放電シナリオの改善に論点が移されてきているように思われる。一方,ITER標準シナリオに対しても,それへ向けた運転領域の拡大(密度,閉じ込め)やELM特性について多くの報告がなされた(JT-60U,JET,DIII-D,AUG)。特に,ペデスタル/ELMに関してはスケーリングや詳細な分布計測等より深まった報告が増えた。一方,電流ホールのような新たに見いだされた物理現象に関してJT-60UとJETから報告があり広く議論されたことは,パラメータだけでなく物理研究の拡がりを示すものとして興味深い。内部輸送障壁(ITB)に関する研究も継続して進展しており,電子加熱の影響や能動的制御に関する結果等拡がりを見せている。ITBプラズマへの不純物の蓄積については複数の装置から報告があり,関心の深さが見られる。同時にECRF入射による蓄積した不純物の排出についても報告がされており,興味深い。加熱・電流駆動に関しては前回に引き続きECRFに関する研究の進展が見られた。特にECRFによる新古典テアリングモード抑制の実験では,ベータ値の向上やフィードバック制御等の進展が報告された(JT-60U,DIII-D,AUG)。ECRFによる電流駆動(ECCD)に関して,体系的なパラメータスキャン(吸収位置,温度,密度,ベータ)と詳細な電流分布計測結果を元にした理論との比較が進展した。一方,回転制御によりno Wallベータ限界の2倍のベータを得たとの報告がDIII-Dより行われた。水冷トロイダルポンプリミターを新たに設置したToreSupraにおいて,3 MWのLHWを4分間,計0.74 MJ入射の入射に成功した。低アスペクト比トカマク(ST)実験では,高ベータ(βT = 35%)の達成(NSTX)やITB形成(MAST)等,パラメータや運転領域の拡大が報告されており興味深い。これらの装置の結果は,パラメータ領域を広げることによるITER研究への貢献も期待される。また逆に,TRIAM-1MやJT-60Uでの中心ソレノイドを用いない電流立ち上げ実験のように,トカマクからSTまでクロスオーバーに貢献しうる成果が報告されたことは興味深い。


1.3 ヘリカル系実験

岡田浩之(京都大学

 全発表論文に占める割合は約1割。現在稼動中の装置ではLHD 13件,W7-AS 4件,ヘリオトロンJ 2件,CHS,TJ-II,H-1NF,HSXがそれぞれ1件であった。LHDでは電子温度10 keV,イオン温度5 keV,ベータ3.2%等の到達パラメータ,ITB,長時間放電等について報告された。中心での高電子温度を得るにはパワーのしきい値がある。また,高イオン温度はイオンへの直接入力パワーが大きいNe放電で達成された。線型理論限界を超える達成ベータ値に対して非線型理論を適用し不安定性成長率飽和についても調べられた。長時間放電に関しては0.4 MW ICRF加熱を用いた160秒放電と1 MW NBIプラズマでのアイランドダイバータによる不純物排出の有効性について報告された。W7-ASは実験計画が一旦終了しモスボールになっており,稼動14年間のまとめが報告された。主要成果として,モジュラーコイル方式概念の実証,アイランドダイバータ,ステラレータ最適化,様様な閉じ込めモード(H*,HDH,H-NBI)等について報告された。特に高密度領域での安定した閉じ込めはステラレータの特徴の一つである。1×1020m-3以上のHDHモードでは良好なプラズマ閉じ込めとともに不純物閉じ込め時間の減少がみられた。今後のW7-Xでさらに発展することを期待したい。CHSではECHをNBIプラズマに入射した場合の新古典的内部障壁(N-ITB)中での電子・イオン温度上昇と径電場およびシア分布が観測された。TJ-IIではオーム電流によるプラズマ電流を-5 kA流すと電子エネルギーが50%ほど上昇することが見出された。また,逆方向ではエネルギーは減少し,これらの変化はグローバルな磁気シア変化が原因と考えている。HIBPによる径電場計測も開始された。H-1NFでは低磁場(0.2T)のArプラズマでL-H遷移,層流の検証と0.5TのH-Heプラズマで回転変換に対するプラズマ生成実験を行った。ヘリオトロンJ装置では中心加熱の70 GHz-ECHプラズマに対してISS95を超える閉じ込めが達成された。ブートストラップ電流が新古典理論とほぼ一致すること,バンピー成分の制御によって方向が逆転すること,ECCDについても確認され,MHD解析に対しては自由境界を用いた解析が重要であること等が報告された。HSXでは28 GHz-ECHを用いてQHSモードでは捕捉粒子閉じ込めが良いためミラーモードよりも閉じ込め時間が長いこと,さらにQHSモードではプラズマ流の減衰時間も長いことが報告された。先進ヘリカル装置がさまざまな概念で設計,建設されている。HELIAS配位ではマックスプランク研究所のW7-Xの開放型ダイバータ設計と装置の進捗状況が報告された。装置建設では超伝導素線の製造が遅れているとのことであった。アスペクト比が小さいいわゆるコンパクトステラレータが米国で計画されている。プリンストンではNCSX(準軸対称,R = 1.4 m,B = 2T),また,オークリッジ国立研究所ではQPS(準ポロイダル対称,R = 0.9 m,B = 1T)の建設計画が進んでおり,それぞれの配位のβ値(4%および2.5%),閉じ込めの最適化に関して報告された。核融合科学研究所の準軸対称装置CHS-qaの設計も進み,β値3.3%,ダイバータ,新古典拡散が評価された。


1.4 その他の磁場閉じ込め実験

平野洋一(産業技術総合研究所)

 この分野に該当すると思われる28件の発表があった。内訳は,逆磁場ピンチ10件,ミラー6件,FRC 5件,スフェロマック2件,その他5件であった。

・逆磁場ピンチ:MSTで,ポロイダル電流をインダクティブに駆動して,ダイナモ効果を制御することにより,一桁のエネルギー閉じ込め時間の向上(1 msから10 msへ)を実現した。これは,ダイナモ効果が必要のない安定な磁場配位を作り,磁場揺動を低減して,磁力線がストキャスティックになることを防ぐことにより実現されたものである。閉じ込め時間は,電流,密度,スケールが同等の,トカマクの比例則から予測される値にほぼ匹敵している。同様の閉じ込め向上は,TPE-RX(約5倍の向上),RFXなどの他の装置でも報告された。また,レーザーのファラデー回転を用いた磁場分布,並びに磁場揺動の計測に,初めて成功したことがMSTから報告された。一方,TPE-RXでは,回転トロイダル磁場により,トーラスの一部に局在する磁場揺動,いわゆるlocked modeを,なくすことができることが報告された。

・ミラー:タンデムミラー方式のGAMMA-10では,アンカーミラー端部に設けたconducting platesの配置の最適化により,電子密度がほぼ2倍(4×1018m-3)に増加し,閉じ込め性能の向上を実現した。また,理論から予測した閉じ込めポテンシャル形成の比例則が,実験のデータベースと合うことを示し,これをもとに30 keVのイオン閉じ込めポテンシャル(Q = 1に対応)を得るために必要な,plugとbarrierのECHパワーを評価した。ロシアから3種類のミラー装置の発表があり,多段ミラーをREBで急速加熱するGOL-3装置で,40%のベータを実現したことが報告された。

・FRC:回転磁場によるFRCの形成・維持,スフェロマックのmergingによるFRCの形成(TS-3,4の実験)など,FRCのslow formationの可能性が示された。また,FRCプラズマの加熱をめざした,イオンサイクロトロン周波数の数分の1の低い周波数の,波の励起と伝搬に関する基礎的な実験の報告があった。理論・シミュレーションでは,三次元粒子モデルを用いて,粒子の運動論的効果を取り入れた計算が行われ,hollowな電流分布が実現されることにより,傾斜不安定性が安定化されることが報告された。

スフェロマック,その他:TS-3の実験では,スフェロマックのmergingで作ったFRCにトロイダル磁場を加えることにより,βN〜15-20の第二安定化領域にある球状トカマクを形成できることが報告された。


1.5 磁場閉じ込め理論

藤堂 泰(核融合科学研究所)

 磁場閉じ込め理論分野では合計約90件の発表があり,日本からは5件の口頭発表と10件のポスター発表がなされた。磁場閉じ込め理論分野の最初の口頭発表は,異常輸送の主要な原因であると考えられているイオン温度勾配モード(ITG)乱流に関する粒子シミュレーション結果の報告であり,揺動スケール長がプラズマサイズに依存せずイオンジャイロ半径の数倍程度であること,輸送係数のスケーリングが現在のトカマク程度のサイズではボームであるのに対して将来の大型装置ではジャイロボームに遷移すること,が示された。この講演の質疑応答の際に,ITG乱流のVlasovシミュレーション研究に取り組んでいる研究者と講演者が互いに相手の研究に対して批判的なコメントを激しく応酬した。座長がセッションの最後に「entertainment」という言葉を使って締めくくったのが印象的であった。どちらが正しいのか,あるいはどちらも間違っているのだろうか。一方で,エネルギー保存を改善するシミュレーション手法や初期平衡分布を正しく考慮することの重要性が指摘されるとともに,運動論的電子と電磁揺動を含んだシミュレーションがなされるまでに乱流シミュレーションは発展してきている。手法の改善を含めて活発な議論が今後も続くのであろう。乱流輸送に関するその他の研究では,多スケールにまたがる乱流現象を総合的に理解しようとする努力が多くのグループによってなされており,多スケールの乱流とzonal flowの非線形相互作用による分岐や間欠性が報告された。また,プラズマ乱流とそれによる輸送は非常に間歇的であるため,輸送係数よりもむしろ輸送流束の確率分布関数に注目するべきであり,その中でも雪崩現象に相当する確率分布関数の裾野が重要である,との認識が定着してきているようである。

 さまざまな閉じ込め装置における平衡・安定性・非線形過程に関するMHD研究が進展している。LHDにおける交換型モードの非線形解析により,局所的に緩和した圧力分布の分布形を保ったまま高圧力分布にした場合には不安定性による分布の変化が小さいことが明らかになり,LHDプラズマが自己組織化的に安定な分布を選びながら高圧力状態に到達している可能性が示された。また,トカマク負磁気シア配位におけるダブルテアリングモードのMHDシミュレーションによって,電気抵抗値に依存しない速いリコネクションが非線形過程において発生することが明らかになった。

 高速イオンとアルヴェン固有モードの研究においては,負磁気シアにおけるアルヴェン固有モードの振る舞いが注目を集めた。負磁気シアアルヴェン固有モード(RSAE)はq値の最低値をある閾値よりも小さくするとトロイダルアルヴェン固有モード(TAE)に遷移することが報告された。この理論はJT-60Uの実験結果をよく説明している。また,負磁気シアにおける高エネルギー粒子モード(EPM)の非線形シミュレーション結果から,EPMが自分自身の構造を変化させながら高エネルギー粒子を輸送することが報告された。EPMの空間構造は高速イオン分布に強く依存するのである。一方,TAEの空間構造は高速イオン分布に対する依存性が小さく,複数の独立した固有モードを用いたシミュレーションによってTFTRで観測されたTAEバーストと高速イオン損失が再現された。ITERに関しては,局所線形安定性解析によりトロイダルモード数n = 5-10のTAEが不安定であるという報告がなされた。


1. 磁場閉じ込め
1.1 ITER関連 1.2. トカマク実験 1.3. ヘリカル系実験
1.4. その他の磁場閉じ込め実験 1.5. 磁場閉じ込め理論

2. 慣性核融合関係

3. 核融合装置工学関係

2. 慣性核融合関係

乗松孝好(大阪大学)

 慣性核融合関係では37件の報告があった。初日の慣性核融合のOverviewは,大阪大学レーザー核融合研究センターの激光XII号を使った高速点火の実験で100倍以上の核融合中性子の増加を観測したことが報告された。これはPWレーザーによる爆縮コアの加熱効率が30%程度あることを示し,高速点火による点火燃焼への確信が得られたことが伝えられた。米国からはJ. Sethianが直接照射関係とドライ壁を持つ炉の研究結果を,M. Keyが高速点火の物理とそれによる点火への展望を,B. Loganがイオンビームによる核融合科学の報告を行った。

 米国Lawrence Livermore National Laboratory (LLNL)研究所ではNational Ignition Facility (NIF)の4ビームの初めてのテストが会期中の10月15日に行われたことが,最終日のサマリで報告された。テスト内容の詳細は不明である。御存知の通り,LLNLでは1994年にNIFの建設を決定して以来,精力的にプロジェクトを進めている。NIFは間接照射による点火燃焼を目的とした198ビーム出力1.8MJのガラスレーザーシステムで2008年ごろ全ビーム完成を,2009年にはDTクライオターゲットを用いた点火燃焼実験を目標にレーザー設備の建設を進めている。直接照射関係の研究では極低密度フォームと固体DTからなるクライオアブレーターの設計改良が進められている。フォームの密度を170mg/cc程度に上げてもそれほどゲインの低下がないこと,一番外側に数百Åの金またはパラジウムをコーティングすることにより,流体力学的不安定性の原因となる初期インプリントを低減できることなどが報告された。LLNLのレーザー核融合炉への動きとしては半導体励起ガラスレーザーマーキュリーが160 kWのレーザーダイオードアレイを用いて0.1 Hzで出力20 J/パルス,1 Hzで出力15 J/パルス,3.3 Hzで出力10 J/パルスの運転に成功したことが報告された。これは将来の実用炉レーザーシステムに必要な出力エネルギー密度を証明する結果である。高速点火関係の動きでは100 TWクラスの実験で生成した電子のフィラメンテーションの話と2006年を目標としたLLNLのNIF,ロチェスター大学のオメガ,Sandia National Laboratory (SNL)のZマシンを使った高速点火の実験計画が示された。これらの装置は十分な圧縮用のビームエネルギーを持っているので,実現すればレーザー研が提案しているFIREXよりも早く点火燃焼を実現する可能性がある。

 現在稼働中の最も大きなレーザーであるロチェスター大学のオメガではクライオの実験を精力的に行っている。プラズマ重合法で合成した燃料容器に室温で千気圧相当の重水素を拡散充填し,そのまま冷却し,赤外線加熱法で,内面の凸凹が3mm程度の均一な厚さの固体重水素の層を作り,爆縮実験を行っている。この内面の凸凹はオフサイトで作られたチャンピオンデータに比べると一桁以上悪い値であるが,爆縮結果は1次限のシミュレーションに近い結果が得られたことが報告された。内面の凸凹は爆縮初期にそこで反射した衝撃波が外表面に伝わり,流体力学的不安定性の種になると考えられているため,注目に値する結果である。

 ワシントンにあるNaval Research LaboratoryではKrFレーザーElectraの建設が進み,1 Hz×10秒,150 J/パルスのバースト運転に成功したことが報告された。電気からレーザーへの変換効率は8%に達し,将来の高速点火の圧縮用レーザーとして十分な効率を達成している。

 イオンビーム関係ではバークレイ研究所におけるビームの伝播,フォーカシングの実験,シミュレーションが触れられ,2002年の2月よりHCX(High Current Experiment)の実験が始まり,1.0 MeV, 170 mA/quadのビームで2 mrad指向性が得られたことが報告された。またSNLでは円筒状のワイヤーアレイを用いたZピンチプラズマからのX線で初期半径/圧縮時半径 > 14で40 g/ccの爆縮プラズマ密度を得たことが報告された。

 フランスからはLMJの現状報告があった。それによるとLMJは2003年に建物建設が始まり,2009年にはレーザーが完成し,2011年に点火を目標とし,現在そのレーザーのモジュールであるLILが完成したとのことである。フランスは米国DOEとの合意により,ロチェスター大学で間接駆動ターゲットの爆縮実験を行うとともにGA,LLNLなどとも協力してターゲットの開発にも力を入れている。LMJのビーム配置を模してロチェスター大学のオメガレーザーで行った爆縮実験では50気圧の燃料ガスを入れて初期半径/圧縮時半径8程度の爆縮では1次元のシミュレーションと同じ中性子発生を観測したことが報告された。ほぼ同じ条件でNOVAを用いて行った実験では1次元シミュレーションの60%程度しか出なかったので,大きな進歩といえよう。

 日本からは大阪大学レーザー核融合研究センターの他に産業技術総合研究所からKrFレーザーSuper-ASHURAが10 J/pulse,1 Hzで104ショット以上問題なく運転されていることが報告された。レーザー共振器と電子ビームダイオードを仕切る金属膜の温度測定の結果は炉用レーザーへとスケールアップすることが可能であることを示していた。


3. 核融合装置工学関係

力石浩孝(核融合科学研究所)

 核融合装置工学にかかわる発表は,全発表件数395のうち59を占めた。ITERを中心として,他の大型装置に関わる技術開発,将来の実用炉をめざした炉形式の提案,材料などの基礎技術開発が含まれている。

 メモリアルセッションにおいて,現在の核融合炉開発の現状総括および将来の方向性が示された。プラズマ物理などに関しては割愛する。磁場閉じ込め核融合炉の実用化においては長パルスあるいは定常化の検討が必要であるが,超伝導化の技術開発の重要性が指摘されている。同時に,発電炉においてエネルギー制御が可能であることのデモを検討する段階に達したことが示された。

 実用炉の形式に関しては,まずは先行しているトカマク型に重点をおき,その後必要に応じて定常運転に有利であるが構造が複雑となりがちなステラレータ型の研究を推進するとの見解が示された。次にITERの現状に関して報告があった。現在,工学設計がひととおり完了し,設置サイトの選定および機器の最適化の検討が進められている。たとえば,超伝導コイルに関しては基礎となる導体設計およびコイル設計が終了し,試作コイルの運転試験が成功している。この結果を踏まえて,さらなるコスト低減のためマージンの低減を進めたい旨の報告があった。

 現行の大型試験装置であるToreSupra,JT-60U,JETの実験状況においては,実用炉の工学設計,制御技術につながる実験研究が多く行われている。たとえば,JT-60UではCSコイルを使用しないプラズマ運転シナリオの確立が報告され,加熱系のミラーをフィードバック制御する技術開発により電流プロファイルの制御などに有効であることが示されている。ToreSupraではリミタのダメージに関する報告があり,JETではアドバンスドトカマクを狙った実験研究が進められている。

 現在建設が進められているKSTARについては2005年運転開始をめどに機器の製作設置が進行中である。TFコイルの製作は進行中であり,特にジャケット材料に影響を与える酸素および水の混入を0.1 ppm以下に抑制することに成功している。PFコイルは熱処理が完了しストランド−ストランド接続技術の適用が行われている。韓国ではKSTARを立ち上げると同時に,ITERへの参画も興味があるとの発言がされた。

 これら中核的な装置の実験を支援する,基礎開発あるいは小型装置の開発研究の現状,将来の炉形式の提案に関する報告が多く見られた。いくつか実例を挙げると,MITおよび東大においてはそれぞれ磁気浮上超伝導コイルを用いた非接触プラズマ実験装置の製作が進行しており,両者とも本年度末ごろの実験開始を目処にしている。また,トカマク型のコンパクト化,低コスト化をめざしてスフェロマックトカマク炉の基礎設計が複数見られ,交換可能なセンターコラムの提案などがなされている。



1. 磁場閉じ込め
1.1 ITER関連 1.2. トカマク実験 1.3. ヘリカル系実験
1.4. その他の磁場閉じ込め実験 1.5. 磁場閉じ込め理論

2. 慣性核融合関係

3. 核融合装置工学関係


最終更新日:2002.12.25(12.12UP)
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