様々な閉じ込め研究

政宗貞男(京都工芸繊維大学)

update is 2001.1.24 17時

 トカマクとヘリカル系以外の代替磁場閉じ込め概念に関する発表は,実験ではRFPおよびULQが9件,ミラー関係が4件,FRCが2件,スフェロマックが1件,燃料補給の観点からのCTダイナミックスが3件あった.スフェロマック,Zピンチ,プラズマフォーカス,磁化標的核融合(MTF),ベルトピンチ,非中性プラズマのリングトラップ,ミューオン触媒核融合,慣性静電核融合など12件は革新的概念として発表された.閉じ込め方式に直接関連する理論ではRFPの非線形MHD,FRCの安定性,ダイポール閉じ込めの平衡と安定性,CT入射のMHDシミュレーション,同軸ヘリシティー入射などの発表があった.RFPでの電流分布制御による閉じ込めの大幅な改善とエネルギー輸送機構および非線形MHD現象の理解の進展,FRCでの加熱や電流駆動とそれによる閉じ込め改善など,代替方式でのMHDの能動制御とその効果が実証されたこと,磁場中を移動するCTや長時間維持されたスフェロマックのダイナミックスの理解が進展したこと,ミラーのポテンシャル閉じ込め長時間化と閉じ込めスケーリング則の確立,などが重要な成果である.革新的概念ではリングトラップのような新しい概念の研究とともに,Zピンチの軸方向シアフローの安定化効果,液体金属壁によるベルトピンチの抵抗性壁モード安定化に関する理論など,概念横断的な研究も進展していることは興味深い.

 様々な閉じ込め研究を統一的な観点からまとめることは筆者の手に余るので,以下では主な閉じ込め概念についての成果を個別に報告する.

 RFPでは種々の方法による閉じ込めの改善の努力が続けられて来たが,重要な成果が得られ始めている.まずMSTにおけるPulsed Poloidal Current Drive (PPCD)による閉じ込め改善研究の進展と非線形MHDの理解の進展があげられる.従来の方法にトロイダル電場の反転を重畳してプラズマ周辺部の電場を正に保持することにより,コア共鳴モードに加えて周辺部の磁場揺動(m=0モード)も抑制されて10msに迫る閉じ込め時間を得ている.電子系についての分布測定が進展して輸送解析も進展し,閉じ込め改善モードでは局所的に電子熱拡散計数が2桁以上改善されて電子輸送障壁が形成される可能性が示された.電流分布制御の定常化を目的としたLHCDのアンテナ結合実験,EBW励起の基礎実験も報告された.また,RFPにおける非線形MHD,特に3波結合による内部トルクの実験的検証,m=0モードによるプラズマ周辺部でのダイナモの実験的検証などの成果も報告された.これらの非線形MHDは今後RFPにおける能動的MHD制御を考える上で,非常に重要な役割を果たすと思われる.

 RFXでは,回転トロイダル摂動磁場によりロックトモードが回避され,1MA領域での閉じ込め研究が可能となった.壁ロック解除の機構として3波結合による内部トルクが重要であることを示している.また,磁場揺動エネルギーが単一モードに自発的に集中する準単一ヘリシティー(QSH)状態についての,実験と理論両面からの研究の進展が報告された.QSHでは磁気島に相当するヘリカル状領域でコア領域の閉じ込めが改善され,再構成された磁力線は磁気面の回復を示唆している.一方MHDシミュレーションにより,ハルトマン数を分岐パラメータとしてマルチヘリシティー(MH)状態からQSH状態への分岐(サドルノード分岐)が起こることが示された.ハミルトン系の一般論はMHからQSHに遷移するとマルチモード摂動に対して磁気面の自己回復性が強くなることを示唆しており,QSHが新しい閉じ込め改善に結びつく可能性が議論された.PPCDに類似のOscillating Poloidal Current Drive (OPCD)やエッジ領域へのバイアス印加による閉じ込め改善効果(E×Bシアの増大)も報告された.

 TPE-RXからは電流<400kAの領域における閉じ込め特性が報告された.電子温度は1keV近い値が得られているが,低密度のためベータ値は10%程度,閉じ込め時間は1ms程度となっている.単発のPPCDにより温度,密度とも20-30%程度増加し,閉じ込め時間が2ms程度まで改善される.F-Jダイヤグラム上の軌跡より,電流駆動不安定性が安定化されたためにシアの強い磁場分布が実現され,圧力駆動不安定性が抑制されて閉じ込めが改善されたとの解釈を提示した.

 ExtrapT2はOHTEを移設した装置であったが,抵抗性壁不安定性研究のための大規模改造後の初期RFPプラズマ特性を報告した.今後の研究の展開が期待できる.また,従来のMHDシミュレーションコードに輸送過程を組み込んだ,新しいコードによるRFP閉じ込めスケーリング研究の結果が報告され,磁場揺動による拡散(磁場方向輸送係数は古典的)で現在までの実験スケーリングが説明可能と結論した.核融合炉条件が成立するためには磁力線のストカスティシティーの低減化が重要であることが強調された.

 STE-2からは,抵抗性壁テアリングモードの安定化をねらった回転共鳴磁場によるMHDモードの制御に関する初期結果が報告され,回転磁場とm=1テアリングモードの直接的な相互作用によるモード回転駆動と,それによる振幅の抑制を示唆する結果が示された.また,内部非線形トルク効果の重要性を示唆するm=0モードとm=1外部摂動の相互作用に関する結果も報告された.

 TPE-2Mからはポロイダルダイバータ実験のまとめが報告された.シェルギャップのため磁場揺動が大きく(約15%),セパラトリクス構造が揺らいで,燃料粒子排気に関しては明確な磁気リミタ効果は観測されなかった.ポロイダルヌル制御の重要性が指摘された.

 TS-3,TS-4では軸方向のマージングにより同一装置でアスペクト比が1.5程度のRFP,スフェロマックおよびSTを生成し,相互比較を行った.低アスペクト比RFPではモード有理面数が少ないため,Hβ線のトモグラフィー計測でm=1/n=3モードの(QSHに類似の)構造が確認された.また,マージングによるトロイダル磁束注入とOHによるポロイダル磁束注入を併用してダイナモモードの抑制が可能であることを示した.

 REPUTEからはULQでのプラスチックペレット入射による高エネルギー電子の研究報告があった.電子速度分布関数に強い非等方性が観測され,ペレットの軌道の曲がりはこの高速電子による選択的アブレーションを示唆している.この軌道の曲がりから評価したペレットへの熱流束は数十MW/m2程度であり,RFPの高速電子による熱流速の状況と似ている.

 反転磁場配位(FRC)では振動磁場,回転磁場,中性粒子入射(NBI)などの能動的手法による加熱や閉じ込め改善など,配位の定常維持のための基礎研究が進展している.

 FIXでは低エネルギー(14keV,23kA)のNBIを行い,プラズマエネルギーの増加とプラズマ保持時間の増加を観測している.ビームによる加熱パワーは十分小さいため,これらの改善の機構解明が今後の課題である.また,低周波(80kHz)振動磁場の印加によるイオン加熱も報告された.振動磁場成分と分散関係の測定より,シアアルヴェン波による加熱の可能性が指摘された.

 TCSからは,従来Rotamakで行われたのと類似の,回転磁場(RMF)によるFRCの電流駆動の研究が報告された.予備電離とRMFのみでRFCを生成し,1ms程度維持した.内部磁場分布の測定からRMFが十分内部にまで浸透していることを確認し,電流分布,圧力分布が解析的モデルの予測と一致することを確かめた.LSXより移送されたFRCにRMFを印加する初期実験結果も報告された.

 スフェロマックではSSPXから,主にプラズマ周辺部から内部への磁気ヘリシティ輸送におけるMHDモードの役割について,実験とMHDシミュレーションの結果が報告された.大口径の同軸ヘリシティインジェクタを用いてエネルギー効率の改善をねらっているが,現在はCTXのレベルにとどまっている.閉じた磁気面の形成過程と磁力線構造の研究が今後重要だとしている.

 ミラーではGAMMA10より,ポテンシャル閉じ込めによる長時間維持と高密度運転の結果が報告された.0.15秒にわたるポテンシャル閉じ込めの維持,密度クランプの克服による15%程度の密度増加などが報告された.イオンの端損失については,非等方加熱によるAIC揺動の結果イオン損失は増加するが,損失イオンのエネルギーに上限があり,閉じ込めポテンシャルが十分高ければイオンの端損失は問題にならないとの報告があった.閉じ込めスケーリングについてはkeV領域のイオン閉じ込めポテンシャルが形成される高ポテンシャルモード,バルクイオン温度が10-20keVになる高イオン温度モードともに望ましいスケーリングであり,全体としてPastukov理論と整合性があるとの報告があった.

 磁化標的核融合では金属ライナー内部にFRCプラズマを生成してライナー爆縮を行う.厚さ1mm,直径10mm,長さ300mmのアルミニウムライナーの爆縮実験では,径方向圧縮率が10:1以上,内向き速度は約5km/sで対称性はよい(<10%)との報告があった.今後は密度1017cm-3,温度300eVのFRC開発が課題である.

 理論的に予測される,強いシアフローをもつ高ベータ平衡緩和配位に関する基礎実験がProto-RTから報告された.電子入射ではフロー駆動に十分な-500V程度のポテンシャルが形成されるが,RFプラズマへの電子入射では中性粒子との衝突によるフローの減衰と電子損失が問題となる.低圧力でのプラズマ生成が今後の課題である.

 Zピンチでは軸方向フローのシアがm=1キンクモードに対して安定化効果をもつ.プラズマ長が50cmのZaP(flow-through Zピンチ)の実験では,軸方向フロー(約4.5×104m/s)とシアの測定,方位角方向磁気プローブアレイによる磁場揺動の測定が行われ,線形MHD 解析結果とのよい一致が報告された.