標記会議が2003年2月18〜19日の2日間,ロシアのサンクトペテルブルグ市で開催されました。以下に会議報告を記します。なお学会誌Vol.79-04月号に本報告が掲載されています. |
第8回ITER政府間交渉について 井上信幸 周知のように,ITER計画には米国が再参加を,また中国が新たな参加を申請したので,日,欧,ロ,加の4極は,会議のはじめに両国を会場の外に待機させておいて,両国の参加について審議した.その結果,全会一致で両国の参加を承認した.次に平和目的と核不拡散についての協定(第19条)の内容について合意した.さらに,サイト共同評価(JASS: Joint Assessment of Specific Sites)の最終報告書を承認した. そののち,米中両国の代表が拍手をもって会場に迎え入れられた.両国の代表は安全で環境に優しいエネルギー源として核融合エネルギーを開発する意志を表明した.4極は中国と米国の核融合計画の重要性を認め,両国の政府間協議への参加を全面的に支持し,歓迎した.両国に対しては,ITER計画に参加するにあたっての条件,例えば第19条の遵守などが説明され,米中はこれらを受け入れた. 会議の参加者は,カナダが5名の代表団(negotiators)と4名のエキスパート,以下それぞれ中国が12名と2名,EUが6名と7名,日本が6名と19名,ロシアが5名と17名,米国が2名と1名であった.また,ITERチームから3名,IAEAから1名が参加した.我が国の代表団は文部科学省3名,外務省1名,日本原子力研究所2名で構成された.またエキスパートは,青森県から木村守男知事以下7名(通訳を含む)の県職員,以下文部科学省,外務省,ロシア大使館,日本原子力研究所等からのメンバーで構成された.米国はワシントンが大雪に見舞われて航空機が欠航したため,予定の人数が参加できなかったとのことである. 中国の代表団は,文化大革命の影響で殆どが30代とおぼしき若い人ばかりであるが,交渉に臨んでは巧みな英語で堂々と意見を述べ,印象的であった.経済成長著しい中国は2005年に有人宇宙飛行を計画しており,また米国のアポロ計画に次いで月面に人を送り込む計画が具体化されていることから,宇宙開発では我が国の先を進んでいる.我が国の核融合研究・教育も遠からず中国に先を越される可能性があり,有能かつ国際経験豊かな多数の人材の育成が焦眉の急であるように思われた. さて,米中の参加受け入れに続いて,ロシアのI. Borovkov原子力省第一次官から歓迎の挨拶があった.次に参加者の紹介や議長(ロシア原子力省のV. Kuchinov博士),セクレタリー,アシスタントの選出が行われた後,各極から以下の発言があった. 中国: 米国: カナダ: EU: 日本: サイト共同評価(JASS)報告書の取り扱いについて審議され,報告書を公表することが合意された.その内容は他の情報とともにITERのウェブサイト (http://www.iter.org/)のWhat's New?に掲載されている.本報告書は政府間協議の枠組みに従い,評価委員による詳細なレビューと,4つの候補地,即ちカナダのクラリントン,日本の六ヶ所村,フランスのカダラッシュ,スペインのバンデヨスの訪問の結果とり纏められたものである.報告書では,4つの候補地全てがITER計画の実施地として決められた技術的条件を満たしていることを確認しているが,加えてサイト毎に異なる長所と短所も指摘している. 次回第9回政府間協議は,EUとIAEAの主催により、ウィーンにおいて2003年5月20〜21日に開催される予定である.
(2003年3月19日受理) |