最終更新日:2017.7.4

私たちのコミュニティーに爽やかな風が吹くように,この学会はどのような活動をするのがよいか,会員の皆さんと一緒に考えてゆきたいと思っています. 本学会は,「プラズマ」と「核融合」について色々な関心をもつ研究者や学生たち1,500人前後が会員として参加しています.驚くべきことですが,事務局のスタッフは,ほとんどの会員の皆さんを知っています.少し声を大きくすれば皆に伝わります.名実ともにコミュニティーだといえます.ですから,あまり戦略的なことは無くしてゆくのがよい,良いことが成長する手助けをするだけでよいと,私は思っています.


私は,とくに次のことを学会の使命だと考えています.(1) 最新の学術情報を収集し発信すること,(2) 新しいアイデアが生まれる場を提供すること,(3) 専門家どうしの連携が生まれる機会を提供すること,(4) 研究成果を発表し評価を受ける機会を提供すること,(5) 研究成果の整理と学術体系の構築を支援すること.さらに,学会が持続的に発展するように,(6) 新しい研究領域を開拓すること,(7) 次世代へのアピールに努めることも大切だと思います.これらを実現するために,以下の課題に取り組みたいと考えています.


●学術フロンティアの開拓:
プラズマは,宇宙に物質が存在し始めた最初の時の状態〈first state of matter〉であり,現在の宇宙においても最も典型的な物質状態です.したがって,プラズマ物理は,先ず宇宙の現象を理解するための学問として発展してきました.他方,科学技術の発展によって,今では地上のあらゆるところで,様々なプラズマが人工的に作られ応用されています.核融合エネルギー開発が,最も先鋭的な挑戦であることは言うまでもありませんが,他にも材料科学,生命科学などの分野で,プラズマが「新しい物質状態」として技術革新の鍵をにぎっています.このような動向を広く俯瞰し,さらに新しい学術フロンティアを開拓する試みを支援してゆきたいと思います.


●専門領域の深化と学際化:
高度に専門化した学術は,他面において学際的でもあります.具体的な対象の深い追求は,同時に抽象化へ通じる道でもあり,逆に抽象化によって研ぎ澄まされた知=イデアは,様々な具体的対象を引き寄せます.専門化した課題に取り組む研究者に加えて,他分野の専門家を交えた議論の場をつくることで,研究の深化,イノベーション,学際化の契機を与えることができるでしょう.年会をはじめとする集会のあり方を検討し,特殊化・高度化と学際化・一般化の両軸で高いレベルを目指すような改善をしてゆきたいと考えています.


●楕円的な広がり:
本学会は「プラズマ」と「核融合」という,素質が異なる二つの項を曖昧に中点「・」で結んでアイデンティティーを表明しています.このことは,いささか難題です.しかし,これこそが本学会の面白さだと考えることもできます.内村鑑三は,宗教世界における物と霊,神と人,あるいはデカルトの二元論などを例にあげ,二つの焦点をもつ楕円こそが真理の姿だ,円満に収まらないことにこそ深みと興味があると述べています.手島勲矢は,ユダヤ思想の特徴として楕円モデルを示し,二つの力の緊張関係を認識する方法論がそこにあると指摘しています.数学的には,楕円は円錐の斜断面だとみることで中心点を統一します.これに対して,人の心は焦点を分節し,文脈の棲み分けをおこなうことで,豊かな世界観をつくることができます.この学会のアイデンティティーを皆で考えてゆくことが,私たちのコミュニティーを豊かにするだろうと期待しています.



一般社団法人 プラズマ・核融合学会 会長  吉田 善章