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プラズマ・核融合分野での計算機シミュレーション技法とその応用

最終更新:2009.12.17


 プラズマ・核融合分野では,スーパーコンピュータによる計算機シミュレーションを中心として様々なシミュレーション技法が開発されてきました。他方,昨今のマルチコアのPCクラスターの進歩は目覚しく,並列計算技法との相乗効果により,スーパーコンピュータに勝るとも劣らない計算パフォーマンスと目覚しい研究成果を挙げてきています。計算機の進展は目覚ましく,アーキテクチャーを意識した並列化技法等を十分に習得しておく事は,研究分野を問わず,計算機を研究手段とする研究者にとって,効率的な研究の進展に欠かせないものとなっています。

 このような背景を考慮し,本講習会では,基礎から応用までの習得を意識して,まず,計算機技法及び並列計算の基礎やPCクラスターの原理と基礎について詳しく説明し,引き続き,プラズマ・核融合分野において研究・開発されてきた計算機シミュレーション技法や応用例,とりわけマルチコアプロセッサと並列計算技法の活用例を中心として講習いたします。

 さらに今回は,並列化の練習等に利用できるよう,典型的な並列化版流体及び粒子コードを公開コードとして提供いたします。また,適切な計算技法・並列化技法のテキスト等の紹介もいたします。

 プラズマ・核融合分野以外の研究者・学生にとっても役立つ内容の講習会ですので,多数のご参加をお待ちしております。

日 時

2009年12月16日(水)10時-17時

場 所

東京大学山上会館(東京都文京区)

申込方法

参加申込書(wordファイル)必要事項をご記入いただき,いずれかの方法でご送信ください

電子メール添付 ・ Fax ・ 郵送

申込期限

講習会当日まで随時 (ただし,定員に達し次第締め切ります)

定 員

60名程度

参 加 費

参加費には消費税およびテキスト代が含まれます

・ 正会員、賛助会員(協賛学協会員を含む) 10,500円
・ 学 生 2,100円
・ 会員外 15,750円
主 催

(社)プラズマ・核融合学会


時 間
題目/講演者/講演要旨

10:00(10分)

はじめに 小川雄一(東大)

10:10(90分)

数値計算技法と並列計算の基礎
 福山 淳(京都大学)



 
プラズマ・核融合分野の数値シミュレーションは、計算機の高性能化とともに急速に進歩を遂げてきた。近年の並列計算技術の進展を視野に入れ、数値計算技法の基礎と今後の展望を概観する。まずシミュレーションにおける微分方程式の役割を述べ、微分方程式の数値解法、大型行列方程式解法等について説明するとともに、並列計算における計算機構成に合わせた計算技法(OpenMP, MPI, OpenCL等)を紹介する。

11:40(60分)

PCクラスターの原理と基礎
 内藤裕志(山口大学)



 現在、小規模のPCクラスターから超並列計算機にいたるまで、様々なレベルの並列計算資源が利用可能である。極端な例では、デュアルコアのノートPC1台で2並列の計算ができる。ここでは、数万円から数十万円規模の比較的小規模のPCクラスターの作り方と利用法について解説する。また、粒子コードを例にとって、並列プログラムの書き方について解説する。最後に超並列処理に向けたアルゴリズムについても解説する。

12:40(50分)

 昼 食

13:30(20分)

差分法を用いた3次元流体コードにおける並列化手法
 坂上仁志(核融合科学研究所)



 非粘性圧縮性の3次元流体方程式を陽的な差分法で計算するシミュレーションコードについて、並列化の手法を述べる。並列化には領域分割法を用いるが、領域の分割方法によって、計算オーバーヘッドと通信コストがトレードオフの関係にあることを明らかにする。そして、並列計算機のプロセッサ間の結合ネットワークのアーキテクチャを考慮しながら、最適な並列性能が得られる方法について議論する。

 

13:50(40分)

流体近似による非熱平衡大気圧プラズマのシミュレーション
 栃久保文嘉(首都大学東京)



 大気圧環境下に様々な形態の反応場を提供する、非熱平衡大気圧プラズマの需要が増しており、その学術的な理解や体系化も急務の課題となっている。本講演では、流体近似によって実現される非熱平衡大気圧プラズマのシミュレーションを行う上で留意すべき点を述べた後、代表的な大気圧プラズマである誘電体バリア放電、大気圧グロー放電のシミュレーション結果から得られるプラズマの特徴を概説する。

14:30(40分)

乱流計算に関連した並列化の注意点とデバッグの方法等
 矢木雅敏(九州大学)


 プラズマ乱流コードを例にとり、MPIを用いた並列化手法に関して解説する。領域分割法によるDOループの並列化を中心に解説する。実行性能を上げるためにはロードバランスを考慮することが必要であり、それに関しても補足する。並列化コードのデバッグはwrite文による数値の書き出しが主となるが、並列化を伴わないシリアルコードの場合との違いを説明する。またコード開発においては、シリアルな物の考え方をリセットし、最初からパラレルな論理思考でコードを書くことの重要性を示す。

15:10(20分)

 休 憩(+プログラム相談)

15:30(40分)

プラズマ核融合ベンチマークコードPAS+による並列計算機の性能評価
 坂上仁志(核融合科学研究所)


  
 LINPACKによる並列計算機の性能評価は著名ではあるが、総合的な実効性能の評価には不向きである。そこで、プラズマ核融合分野おいて、総合的に並列計算機の性能を評価できるベンチマークスイートPerformance Analysis Suite for PLasma-fUsion Simulation (PAS+)を整備した。実際に種々の並列計算機でPAS+を実行したので、その結果について報告する。

16:10(40分)

スペクトル法による流体計算
 佐竹信一(東京理科大学)



 スペクトル法を用いた乱流コードの並列化に関して解説する。特にMHD乱流についてスペクトル法と差分法をあわせたコードについてのメモリーの割り振り方を踏まえた FFTの適用の仕方、および並列時での統計量の取得の仕方を説明する。これを用いた大 型計算の例も説明する。さらに、この並列方法を応用したホログラム流体計測アルゴリズムについても概説する。


16:50(10分)

おわりに   中島徳嘉(核融合研)