3.ミルククラウン 3-1

3.ミルククラウン

 このような簡単な原理を流体方程式に適用することによって,今までにできなかった計算ができるようになった.この顕著な例がミルククラウンである.実はミルククラウンの形成メカニズムはいまだにわかっていない.世間では表面張力が原因だと思っている人が多いが,そうではないことを以下に示しながら説明しよう.Fig.3Animation2)は100×100(水平方向)×32(垂直方向)の一様矩形格子を用いた計算で,格子幅はDを液滴の直径として,D/16とした.最初,底部にはD/4の薄い液膜を置き,これに液滴を衝突させた.液滴の速度はUでレイノルズ数はRe = UD/n = 8,000とした.空気の密度が液体の1,000分の1のときは,不安定性により,細かく分裂しミルククラウンになる兆候を示した(下図)が,空気の密度をこの10倍にすると,驚くことにこの不安定性が消滅した(上図).これは,まだ誰も見たことがなく我々のシミュレーションで初めて発見された現象である. 

 一般に誤解されている表面張力は,Fig.3のような円筒の筒状に上に延びていく部分が不安定性により分裂していく過程には寄与しない.表面張力は,平面の表面が凸凹になるのを元の平面に戻そうとする効果があり,むしろ安定化に働くのである.しかし,一端この円筒がFig.のように円周方向にちぎれると今度はそのちぎれたそれぞれの部分は細い棒状のようになる.この棒が細くなると,棒の円周方向の半径が小さくなり,表面張力が増大しこの棒をちぎってしまう.こうして,棒の先端が丸くなってちぎれていく.よく実験の写真で見るように,まるでカタツムリの角のようになってゆく部分が表面張力の影響である(このシミュレーションではそこまで捕らえきれてはいないが).では,元々の筒が円周方向にちぎれるのはなぜだろうか?これに対する説の中で最も可能性があるものと考えられてきたのが,レイリーテイラー不安定性である.円筒の部分が半径方向に広がる時に加速度運動をするために不安定になると考えられてきた. 

Fig.3

Fig3:ミルククラウンの形成.空気の密度が(上図a)1mg/cm3,(下図b)10mg/cm3の場合.

Coronet formation. Air density is changed from 1mg/cm3(top) to 10mg/cm3 (bottom).

  
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